毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2024.7.05
「YOLO 百元の恋 」 すさまじい肉体の説得力
ドゥ・ローインは、実家に引きこもっている無職の32歳。母にはあきれられ、彼氏を親友に取られ、妹とも衝突してしまう。ついに家を出ることになったローインは、ボクサーのハオ・クン(ライ・チァイン)に一目ぼれをして、彼を支えることに。けれども試合に負けた彼が姿を消してしまい、全てを失ったローインは、ボクシング大会への出場を決意する。
安藤サクラ主演の「百円の恋」を中国の人気コメディアン兼俳優のジャー・リンが主演、監督を務めてリメークし、中国で大ヒットを記録。前半はオリジナルとは異なるコメディータッチに面食らったものの、言いたいことをなかなか言えないローインが覚醒していく姿を見ているうちに、エールを送りたくなってくる。オリジナルを思わせる場面もちりばめながら、トレーニングを始めると「ロッキー」のテーマが流れるなど一貫してエンタメ性が高い作り。50㌔以上の減量をしたリンの肉体の説得力もすさまじい。他者との勝負の結果ではなく、何より自分自身を取り戻したことが伝わるラストに胸が熱くなる。2時間9分。東京・新宿バルト9、大阪・T・ジョイ梅田ほか。(細)
異論あり
リメークというには原作からかけ離れ、前半と後半でも別の映画のよう。しかし最後の最後でびっくり。太って登場したローインは特殊効果だと信じて疑わなかったが、撮影期間中に実際に大減量し体を作ったという。一番の見どころはエンドクレジット。お見逃しなく。(勝)