毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.4.21
配信チェック:「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」〝一気見〟のススメ
テレビの連続ドラマのファンにとって、今は忙しいはず。地上波の民放キー局は3カ月ごとに新番組を一斉に開始するが、今月はその時期に当たる。それに加え、今やネットのみで見られる新作も随時配信される時代。私を含め、気になる作品のある視聴者は、チェックが大変だ。
今作は3月から配信。米倉涼子が主演で、松本穂香、遠藤憲一らが共演する。米倉が演じる伊沢那美の職業は、国境を越えて死者を遺族の元に届ける「国際霊柩(れいきゅう)送還士」。第1話では、フィリピンに渡った青年(葉山奨之)が現地で死亡。彼の父(杉本哲太)は「息子に会いたくない」という。一体なぜ……。人の「死」というテーマに向き合う一方、コメディーめいた場面も織り交ぜ、重たい気分だけを残させない。重層的な展開が、映像作品として心地よい。
物語と別に、興味深かったのが第1話終了後の「予告」。第2話でアフリカの国、第3話で韓国、最終回の第6話でボリビアが舞台になる場面まで、全話の映像を順に紹介してしまう。次週を待つ放送と違い、好きな作品の「一気見」が可能なのが配信媒体の特徴。「その利点を生かして」と勧めているかのよう。私は第3話の終盤、ある登場人物の真実が明かされるシーンが、特に心にしみた。
堀切園健太郎監督。Amazonプライム・ビデオで独占配信中。(屋)