Y2K=2000年代のファッションやカルチャーが、Z世代の注目を集めています。映画もたくさんありました。懐かしくて新しい、あの時代のあの映画、語ってもらいます。
2024.3.20
「好きバレ」が一番怖い! Z世代が見たY2Kシネマ「好きだ、」宮崎あおいなど出演
シャープペンシルの擦れる音、
消しゴムの擦れる音、
不思議な始まり方だった。
不器用な人たちの沈黙の恋愛。
ずっと「・・・・・・」って感じの恋愛映画。
今まで見た恋愛映画の中で、私が一番好きだと感じた作品「好きだ、」について語っていく。
悲しい事件が起きる
何もない田舎町で暮らす17歳のユウ(宮崎あおい)がひそかに思いを寄せるのは同級生のヨースケ(瑛太)。「好き」を伝えられないユウは、ヨースケに対する自分の気持ちを隠しながら日々を過ごしていた。ヨースケは野球部をやめ、河川敷でギターを弾いていた。彼は静かに音楽の道に憧れを抱いている。しかし、いつも同じフレーズしか弾かないため、そのフレーズを覚えたユウは、口ずさむようになる。そんなある日、二人を疎遠にする悲しい事件が起きる。その日以来17年間お互いがお互いの道に進むが、34歳になったユウ(永作博美)とヨースケ(西島秀俊)は東京で偶然再会する。
「好きバレ」が一番怖い
ただ平凡で、不器用な人たちのドキュメンタリーを見ているような感覚になる。恋愛に対して臆病すぎる二人の会話はぎこちなくて空疎だ。でも、そこにものすごく共感してしまう。相手に「好き」がバレないように必死に平然を装うユウを見て、なぜか「あ、知ってるこの感じ」っていう気持ちになる。心の中ではものすごく大きな感情が湧いているくせに、顔の表情と行動は「別に何もないですよ~」みたいになっちゃう感じ。ほんと、恋愛って「好きバレ」が一番怖いですからね(笑)。恋愛に不器用であればある人ほど、身につまされる感覚なのではないだろうか。まさにユウは恋愛下手を象徴する不器用な少女だ。
とても悲しい乙女心
ヨースケもまた不器用な男だ。少年時代にユウの姉に興味を持つが、その男子心を必死に隠そうと取り繕う姿は、思春期真っただ中の不器用少年そのものだ。
ヨースケが、自分の姉に興味があると知ったユウはひそかに嫉妬心を抱く。だけど、嫉妬しているとバレないように無理に平然とした態度をとるユウの瞳には、とても悲しい乙女心が宿っている。そんなユウは、あえて姉とヨースケをくっつけようと必死になるが、その時のユウの目がなんとも切ない。姉の話題を介してでしか好きな人の近くに居られない。切なすぎる、そして世界が狭すぎる。
世界が狭すぎた
「最近の高校生は、ませてる」なんて話をよく聞くが、私からすれば、彼らはまだまだ子供だ。いや、もしかすると人生の諸先輩方からすれば、大学生の私も同様にガキなのかもしれない。でもやっぱり〝高校〟という学校だけが自分の世界の全てであったあの頃は、何をするにも世界が狭すぎた。
いろんな感情でショート寸前
ユウとヨースケが住む世界も同じだ。そんな状況で芽生えた恋と嫉妬。多感な年ごろには大きすぎる一大イベントだろう。世界の狭さ故に頭の中はいろんな感情でショート寸前なのだと思う。自分の中にある「恋心」という謎の物体はそう簡単に攻略できるものではない。そしてもう一つ「嫉妬」という厄介な物体。もうゲームで言ったらレベル100ぐらい難しい。
次に何が起こるのか
攻略困難なこの状況に目を背けようとする二人の気持ちは空回りする。背けたい気持ちに休憩を入れるかのように、この作品は度々周りの風景が映し出される。目の前のドキドキから話を変えようと逃げ合う二人の空気感は、これぞ恋愛という感じ。長すぎる沈黙のむずがゆさからなのか、次のシーンでは衝動的な何かが起こってしまいそうなドキドキ感がある。次に何が起こるのか、目を離すことができない。
ギャップこそが
よく、こんな感じの静かな恋愛を「淡く儚(はかな)い恋愛」なんて言葉で表現したりするけど、この作品は淡くも儚くもない。ユウとヨースケの目はいつも闘争心や、敵対心みたいな強い感情があったし、むしろ「淡く儚い」の正反対を行っていると感じた。だけど二人の日常は本当に静かで、そのギャップこそが私のこの作品の最も好きなところである。
焦がれる者たちのゴールデンタイム
何かに酔っているような感覚で始まるこの映画。恋に盲目で他の何も考えることができない恋心をリアルに感じてみてほしい。なんせ、バレンタインが終わりホワイトデーも終わったこの時期だ。恋焦がれる者たちのゴールデンタイムに違いないので。
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