「支配種」より © 2024 Disney and its related entities

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2024.5.14

テロ事件と企業技術を巡る、チュ・ジフンとハン・ヒョジュ共演のSFサスペンス「支配種」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

梅山富美子

梅山富美子

チュ・ジフンとハン・ヒョジュの演技にしびれる韓国ドラマ「支配種」(全10話、ディズニープラスで配信中)が、8日に最終回を迎えた(以下、本編の内容に触れています)。
 


主演2人の素晴らしい演技

本作は、ゾンビ時代劇「キングダム」のチュ・ジフンと、昨年ヒットした「ムービング」の母親役が記憶に新しいハン・ヒョジュが共演し、「秘密の森~深い闇の向こうに~」のイ・スヨンが脚本を務めたSFサスペンス。
 
過去に起こったテロ事件の真相を追い続ける元軍人のウ・チェウン(チュ・ジフン)は、国際的バイオテクノロジー企業BF社の代表ユン・ジャユ(ハン・ヒョジュ)に近づく。彼女は、テロで生き残ったのちBF社を世界的企業へと発展させていた。
 
チェウンは、テロで負傷した元大統領の命を受け、ジャユのボティーガードとして働きながら彼女を調査。ジャユのことは、会社の利益と自身の目的のためならどんなこともしかねない人物だと怪しんでいたが、徐々に誤解だと気づく。信頼し始めていた2人だったが、警護中にチェウンは銃で撃たれ瀕死(ひんし)となり、ジャユはある行動に出るのだった……。
 
テロ事件とBF社の技術を巡るサスペンスが物語の主軸にあるのだが、主人公2人の恋人でも仕事仲間でもない、けれども誰よりも近くで守り抜くという関係性がしびれる。特に両者とも最初はお互いの腹の内を探りながら、必要最低限の会話のなかでその真意をくみ取ろうとするのを、チュ・ジフンとハン・ヒョジュがこれでもかとじらすように演じる。
 
その一方で、アクションはド派手。チェウンの能力を確認するためにVR(仮想現実)が使われる第2話では目まぐるしいアクションが続き、映像のテイストはゲームを彷彿(ほうふつ)とさせる。第4話の山での銃撃戦も圧巻で、負傷したチェウンはこのまま死んでしまうのでは? と思うレベルだが、それがまさかの展開につながる。
 

重厚な雰囲気が、いやしとなる猫のマンシクの名演技で和らぐ

チュ・ジフンふんするチェウンは、ボディーガードの域を超えた仕事っぷりで、「こんな人に守られたい」と思わずにはいられないキャラクター。ボディーガードとしての仕事は完璧なのはもちろん、ハッキング事件では重要な手がかりに気づき、危機が迫るジャユを自宅で匿(かくま)うことも。元大統領や総理など、さまざまな人の脅しや思惑にも揺るがず、自分の目的のためにブレないところも魅力だ。
 
また、ハン・ヒョジュ演じるジャユは、感情を表にあまり出さない人物。人工培養肉に人工臓器の開発……と人間が〝完全な支配種〟になることを目指して突き進むのだが、人類の救世主なのか、それとも争いの新たな火種を生む疫病神なのか判断がつかない。だからこそ、視聴者もチェウンと同じ視点で彼女を疑いつつ素顔を知っていくことになる。
 
人工培養肉に人工臓器と価値観を問いかけるような題材は、いつか現実の世界でも実現するかもしれないというリアリティーがある。ただ、登場人物たちが冷静で新しい技術の理解が早く感じられ、もう少し深掘りされるべき問題なのではないかとも思わずにはいられなかったし、ジャユが目指すような世界は明るい未来なのかと疑問が残った。
 
そして、最終話(第10話)は、テロの真相と犯人に焦点が絞られたような内容で、人工臓器についてはうやむやになった感は否めず、結末については意見がわかれることだろう。もし続編があるのならば、このドラマなりの答えを出してほしいところだ。
 
全体的に重厚な雰囲気のドラマのなか、唯一と言っていいほどいやしを与えてくれるのが、チェウンの猫マンシク。かなりの名演技で、孤高のジャユにマンシクが寄り添う姿は、ほっこりせずにはいられない。

「支配種」はディズニープラスのスターで独占配信中

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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