「となりのトトロ」メイが食べる"サツキのお弁当" イラスト眞野えみ里

「となりのトトロ」メイが食べる"サツキのお弁当" イラスト眞野えみ里

2023.1.05

    ジブリ飯でまじめに"子どもの食育"みんなすくすく大きくな〜れ!管理栄養士の"映画飯トレ"

    3度の飯より映画が好きという人も、飯がうまければさらに映画が好きになる。 撮影現場、スクリーンの中、映画館のコンフェクショナリーなどなど、映画と食のベストマリッジを追求したコラムです。

    石松佑梨

    石松佑梨

    昨年の11月1日にジブリパークがオープンしました。ジブリパークは、愛・地球博記念公園内に、森と相談しながらつくっているスタジオジブリの世界を表現した公園です。そんなジブリの『食べるを描く』展示がジブリパークで開催されています(11月まで)。
    いわゆるジブリ飯を取りあげたコンテンツは多く存在しますが、私は管理栄養士ですので、それらを食育からひもといてみます。

    ジブリ飯でまじめに"子どもの食育"を考えてみた!

    子どもにとっての食育とは、食に関する知識を学び、興味関心を育むことで、生涯を通して健康的な食生活を送れるようにするための教育です。
     
    今回、とりあげるジブリ飯は以下の三つです。
    ①   「となりのトトロ」メイが食べる"サツキのお弁当"
    ②   「ハウルの動く城」マルクルが食べる"ボリューム朝食"
    ③   「崖の上のポニョ」ポニョと宗介が食べる"ハムラーメン"
     
    では、ジブリ飯による食育スタート!

    ①「となりのトトロ」(1988年)メイが食べる"サツキのお弁当"


    昭和30年代が舞台であるこの作品は、学者の父と一緒に田舎に引っ越してきた姉妹・サツキとメイが主役です。となりの森にはお化けのトトロが住んでいました。ここでのジブリ飯はしっかりものの姉・サツキが、小学校に行く前の忙しい朝の時間で、手際よく作る"家族3人分のお弁当"です。

    人物)メイ 4歳
    献立)白米、梅干し、めざし、うぐいす豆煮、桜でんぶ
    コメント)羽釜ごはんを炊ける小学6年生サツキは、はっきり言って最強です。"自炊"は自分や家族の健康を守れるだけでなく、自分の力で"おいしい"を作り出せる能力は一生の宝物になってくれます。
    お弁当の彩りもいいですね。見た目はおいしさの8割を占める要素だといわれています。お弁当のふたを開けた時のメイの笑顔が目に浮かぶようです。
    栄養面をみてみましょう。お米は色から判断して玄米ではないと思います。玄米は食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富ですが、一方で消化が悪いというデメリットがあります。胃腸が未発達なメイの年齢に、玄米食はまだ早いかもしれません。成長に合わせたお弁当の量と内容への配慮も、サツキを見習いたい点です。また魚を多く使っている点も◎。めざしだけでなく、桜でんぶの材料も白身魚ですね。現代人の魚離れは深刻です。魚油に多く含まれるオメガ3系脂肪酸には血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる作用があり、脂質異常症、高血圧、動脈硬化、心疾患、脳血管疾患などの予防に役立つことがわかっています。"魚弁当"は、今こそ現代人が見直す食生活かもしれません。さすがサツキ!

    ②「ハウルの動く城」(2004年)マルクルが食べる"ボリューム朝食"



    魔法使いハウルに恋をしたソフィーは、ハウルを追う荒地の魔女によって90歳の老婆の姿に変えられてしまいます。呪いをとくためにハウルの城に向かったソフィーは、そこでハウルやその弟子・マルクルたちと生活することになります。ここでのジブリ飯は、ハウルが美しい手つきで作った"ボリューム満点の朝食"です。

    人物)マルクル 10歳前ぐらい
    献立)パン、エメンタールチーズ、目玉焼き2個、厚切りベーコン、紅茶
    コメント)マルクルの課題は好き嫌いが多い点です。作品中でも「魚と芋は食べない」と言っていますね。魚嫌いな人におすすめしたい食べ物が卵です。同じたんぱく質源である肉類は、魚や卵に豊富なビタミンDが不足しています。ビタミンDはカルシウムとともに強い骨を支える栄養素で、成長には欠かせません。ひと昔前まで「卵はコレステロールを上げるから1日1個までにしたほうがいい」といわれていましたが、近年では体内のコレステロールは食事による影響が少ないことがわかっていますので、あまり気にする必要はありません。子どもの食育において、卵はアレルギーにならない程度で、積極的に取り入れてほしいものです。
    またマルクルの嫌いな芋類は、とりあえずお城の食品棚に置いてあった果物でカバーしましょう。かぼちゃなどのデンプン質な野菜であれば、さらにGOOD。豊富な食物繊維が、チーズの乳酸菌とともに腸内環境を整えてくれるはずです。
    マルクル、ハウル師匠を目指して、たくさん食べて大きくなってね!

    ③「崖の上のポニョ」(2008年)ポニョと宗介が食べる"ハムラーメン"


    宗介は海辺の町の崖の上の一軒家に母・リサと2人で暮らす少年です。海岸でジャム瓶にはまって動けなくなった魚の女の子・ポニョを助けたことをきっかけに2人の友情が芽生えます。この作品のジブリ飯は、リサが2人のために作ってくれた"ハムラーメン"です。

    人物)ポニョ、宗介 ともに5歳
    献立)インスタントラーメン、厚切りロースハム、卵、ネギ
    コメント)吹き荒れる嵐の中でなんとか家にたどり着いたリサが、ポニョと宗介に作ってくれたのは、お湯を入れるだけのインスタントラーメンでした。こんな大変な日なのに、ポニョの大好物であるハム、ハムとともにたんぱく質源になる卵、ビタミンや食物繊維が豊富なネギまでトッピングしてくれました。栄養面だけでなくリサの愛情が感じられるシーンです。

    うれしいポニョは手づかみでハムを口に入れます。一見すると"お行儀が悪い!"と注意しそうな手づかみ食も、自分で食べることを始めたばかりの子どもたちにとってはとても重要なことです。大人になると無意識的に行っている"食べる"という行動には、多くの動作が関わっています。まず食べ物を目で見て認識し、その食べ物を口から取り入れて咀嚼(そしゃく:かみ砕くこと)したら、舌を使って食塊を口の奥へと運び、食道から胃まで送りこんでいくのです。どこかひとつでもうまくできないと、"食べる"という行動はスムーズにできません。
    ポニョは大きなハムを手づかみしてそのまま口に入れた後、"熱い熱い"と言っています。だからこそ、麺は箸で食べてみようと思ったのかもしれません。ところが麺は、ハムと同じように食べることはできないのです。箸を使って麺を口の近くまで運んだら、唇をすぼめて麺をすする必要があります。このタイミングがなかなか難しく、このような体験の一つ一つが、子どもたちにとっては大きな学びへとつながるのです。

    ここまでジブリ飯を食育の観点からひもといてみました。私は映画の"食べる"シーンが大好きです。「となりのトトロ」では、おばあちゃんの畑でとれたきゅうりにサツキたちがかぶりつくシーンがあります。夏の暑い日にのどを潤す冷えたきゅうり、パリッとした食感とともにはじけ飛ぶ青々しい香りとしぶき・・・・・・無意識的に味や香り、まわりの風景までが想像されるのは"食べる映像"ならではです。前回の記事"最新の3D映像(「アバター2」)"と比べると、原始的とも思える2Dの"食べる映像"ですが、誰もが自分の記憶をたどって五感に働きかけるという意味では"5D映像"といってもいいのではないでしょうか。
    そんな映画飯で広がる夢は無限大∞ 。これからも映画飯で大いにトトノイたいと思います!

    「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の最新3D映像をとことん楽しみたい人へ|トップアスリート専属管理栄養士の〝映画飯トレ〟

    イラスト: 眞野えみ里(まの・えみり)

    1996年生まれ。大学でファッションデザイン・プロダクトデザインを学び、
    授業終わりには映画館でアルバイト。
    大学卒業後は広告営業として働き、コロナ禍でおうち時間が増えたことをきっかけに、イラストをインスタグラムに投稿し始める。現在は仕事の傍ら、映画のイラストと感想を「emamovie2」というアカウント名で投稿中。
    好きな映画作品は「ビフォア・サンライズ」「ジョー・ブラックをよろしく」

    となりのトトロ

    昭和30年代、学者の父に連れられ小学校6年生のサツキと4歳のメイは田舎に引っ越す。四季の美しいその地に建つ家はまるでお化け屋敷のような一軒家。その家にはふしぎな生き物が住んでいたのだ。

    製作年 : 1987

    監督 :

    出演 :

      ハウルの動く城

      ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「魔法使いハウルと火の悪魔」が原作。
      呪いで老人にされた少女ソフィーと魔法使いハウルの共同生活と愛の物語。

      製作年 : 2007

      監督 :

      出演 :

        崖の上のポニョ

        魚の女の子ポニョと保育園児宗介の出会いの物語。海岸で宗介から助けられた魚のポニョと宗介はお互い好きになるが、魔法使いの父フジモトに連れ戻されてしまう。

        製作年 : 2007

        監督 :

        出演 :

          ライター
          石松佑梨

          石松佑梨

          いしまつゆり トトノイニスト (管理栄養士・国際中医薬膳管理師)
          サッカー日本代表選手をはじめ、世界で活躍するトップアスリートたちの専属管理栄養士として従事。のべ2万人以上に提供してきた「頑張らない食トレ」を武器に、近年は企業の健康経営や地域創生も展開する。幼い頃から、おいしいへの執着心が人一倍強く、おいしく健康に食べるための「ずるい栄養学」で、誰もがおいしく食べて健康になれる社会を目指している。著書に「過去最高のコンディションが続く 最強のパーソナルカレー」(かんき出版)がある。

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