10月11日（金）、期待の新作〝ジョーカー2〟こと「ジョーカー：フォリ・ア・ドゥ」が日本公開となる。大ヒット映画「ジョーカー」（2019年）の続編にして最終章となる今作の公開に合わせて、これまで人気キャラクター「ジョーカー」を演じてきた名優たちと、それぞれのジョーカーの特徴や魅力を振り返る。
 

シーザー・ロメロ：「バットマン」（1966〜68年）およびその映画版（66年）

ジョーカー初めての実写化は、テレビドラマシリーズ「バットマン」だった。このシリーズは子どもも見やすいコメディータッチの作品であるため、その後登場するジョーカーたちに比べると〝クラウン（道化）〟色が強い印象だ。コメディアンであるロメロが演じたのもそのためかもしれない。
 

「バットマン」より
BATMAN and all related elements are the property of DC Comics TM & © 1989.  ©1989 Warner Bros. Entertainment Inc. TM & © 1998 DC Comics. All rights reserved.

ジャック・ニコルソン：「バットマン」（89年）

コミック版のジョーカーといえば、濃いメークと、目や口を大げさに使ったインパクトのある感情表現、強烈な笑顔が印象的なキャラクターだ。ティム・バートン監督が手がけた「バットマン」でジャック・ニコルソンが演じたジョーカーは、歴代ジョーカーの中でも特にその〝強烈な笑顔〟を忠実に再現することでインパクトを与えたジョーカーだろう。
 
ニコルソンはホラー映画「シャイニング」（80年）でポスターにフィーチャーされた狂気的な笑顔でもおなじみの名優。その巧みな表情筋はジョーカー役でも生かされ、笑っているのにおぞましい印象を与える〝張り付いたような笑顔〟が再現された。
 
「化学薬品入りのタンクに落下したことで肌がただれ、表情が固まってしまった」という原作のジョーカーの有名なバックグラウンドが採用され、作中で明確に描かれているというのも「バットマン」版ジョーカーの特徴といえよう。
 

「ダークナイト」より　
BATMAN and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics.  © 2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ヒース・レジャー：「ダークナイト」（08年）

クリストファー・ノーラン監督がバットマンを描いた「ダークナイト」3部作（05〜12年）の中でも観客・批評家の双方から高い評価を受けている2作目「ダークナイト」。ジョーカーはこの「ダークナイト」に登場し、映画史に残る悪役のひとりとなった。今作のジョーカーはひたすら人を堕落させ、世界の秩序を壊すことに快楽を覚えている、まさにキリスト教における悪魔のような〝純粋な悪〟だ。
 
歴代でもっとも〝サイコパス〟という言葉が似合うこのジョーカーにとっては、正しくあろうとするバットマンが人を殴ったり殺したりすることで信条が壊れることは一番の悦（よろこ）びである。ジョーカーに対していくら暴力を振るおうと、極論命を奪おうと、〝ジョーカーの勝ち〟になってしまうというのが彼の恐ろしく、不愉快なところである。
 
今作でジョーカーを演じたのは、ヒース・レジャー。彼はホテルに6週間閉じこもり、犯罪者の思考回路を専門書で研究したり、ジョーカーになりきって日記を書いたりと徹底的な役作りを行った。
 
完成した〝悪のカリスマ〟ジョーカーの演技は米アカデミー賞で助演男優賞を受賞したが、彼は受賞当時すでにこの世を去っていた。ニューヨークの自宅で全裸で亡くなっているところを発見された彼の死因は薬の併用摂取による急性薬物中毒（事故死）だとされているが、「ジョーカー役にのめり込みすぎて心身に異常をきたしたのではないか」との言説がいまだに広くささやかれているのもうなずけるほどに、キャラクターの完成度が高かったのだ。
 
ちなみに今作のジョーカーはシーンによって自身の過去について語るエピソードが異なっており、過去の回想も存在しないため、バックグラウンドが非常に謎めいており、そこも彼の魅力になっている。
 

「スーサイド・スクワッド」より　
SUICIDE SQUAD and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics.  ©2016 Warner Bros. Entertainment Inc. and Ratpac-Dune Entertainment LLC.

ジャレッド・レト：「スーサイド・スクワッド」（16年）

「ワンダーウーマン」「アクアマン」といった作品で知られたDCエクステンデッド・ユニバース（DCEU）にもジョーカーは登場する。それが、「スーサイド・スクワッド」でジャレッド・レトが演じたジョーカーだ。
 
今作ではジョーカーに恋するキャラクター「ハーレイ・クイン」の方がメインであるため、ジョーカーの活躍はそこまで多くないのだが、役づくりを丹念に行ったレト版のジョーカーは非常にハイな狂気を持っており、彼も十分に印象的なキャラクターである。
 
歴代もっとも〝セクシーなジョーカー〟といえる彼は、整ったオールバックや銀歯、タトゥーといったファッションも含め小奇麗な仕上がり。ハーレイ・クインらのファッションも印象的な「スーサイド・スクワッド」は、米アカデミー賞においてメークアップ＆ヘアスタイリング賞を受賞している。
 

「ジョーカー」より　
TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

ホアキン・フェニックス：「ジョーカー」（19年）、「ジョーカー：フォリ・ア・ドゥ」（24年）

今回続編が公開となる19年の「ジョーカー」は、ジョーカーというキャラクターを初めて主役に据えた実写映画として公開前から世間の大きな期待（と不安）を浴びた作品だった。
 
ホアキン・フェニックスが演じたのは、映画終盤でジョーカーへと変貌を遂げる、アーサー・フレックという人物。彼も心身ともに〝ジョーカー〟たろうと徹底した役づくりを行ったとされ、やせ細った体形と、家でも役が抜けなくなるほどの没入は米アカデミー賞で主演男優賞を彼にもたらした。
 
コメディアンを夢見る、障がいを持った心優しいピエロメークの大道芸人が、世の不条理を多く経験して〝悪のカリスマ〟になるまでを描く今作のジョーカーは、これまでのミステリアスなサイコパスといったイメージとは異なるまったく新しいジョーカーといえる。ジョーカーの特徴ともいえる〝道化師メーク〟がどこか〝残酷な世に揉（も）まれた哀れな道化〟といったふうに昇華された新解釈ジョーカーは大衆の共感を呼んだ。
 
最新作「ジョーカー：フォリ・ア・ドゥ」での彼は前作の事件により注目され、一挙手一投足が奇妙な影響力を持ってしまっている。そのため、今回のアーサーは自分の内側で妄想していただけの世界観を外に広げようとしたり、広げざるを得なくなっていたりする節があり、さらに〝謎の女性リー〟（レディー・ガガ）の影響もあって彼の人格・アイデンティティーにはさらなる揺らぎ・混乱が生じてしまうのだ。
 

バリー・コーガン：「THE BATMAN－ザ・バットマン－」（22年）

エンドクレジットで一部登場しただけとはいえ、これまでのジョーカーとはまた違った毒々しさを感じさせたのが、「THE BATMAN」のバリー・コーガン版ジョーカーだ。「聖なる鹿殺し」「イニシェリン島の精霊」などでも個性的な役柄を与えられているコーガンが本格的に演じる時が来るのであれば、またジョーカーに新たな魅力が与えられることだろう。26年公開予定の「THE BATMAN」の続編に彼が登場することも期待したい。
 
最新作「ジョーカー：フォリ・ア・ドゥ」でも衝撃的な展開を迎えるジョーカーの物語。色あせることのないであろうこのキャラクターから、今後も目が離せない。
 
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「バットマン」
デジタル配信中
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販売元：NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2024年10月現在の情報です。
 

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10/9発売 8580円（税込み）
発売元：ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元：NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2024年10月現在の情報です。