2023年も、たくさんの映画や配信作品が公開されました。とても見切れなかった!とうれしい悲鳴も聞こえてきそうです。「ひとシネマ」執筆陣が今年の10本と、来る24年の期待作3本を選びました。年末年始の鑑賞ガイドとしてもご利用ください。
2023.12.26
印象残った 今日的なテーマの良作 井上知大
ゆく年編
「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」(金子由里奈監督)
「山女」(福永壮志監督)
「さよなら ほやマン」(庄司輝秋監督)
「市子」(戸田彬弘監督)
「せかいのおきく」(阪本順治監督)
「バービー」(グレタ・ガーウィグ監督)
「TAR/ター」(トッド・フィールド監督)
「ファースト・カウ」(ケリー・ライカート監督)
「Rodeo ロデオ」(ローラ・キボロン監督)
「セールス・ガールの考現学」(センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督)
世界的ヒット作の不振に日本らしさ
「男らしさ」「女らしさ」などジェンダー規範への問題提起といった、今日的なテーマを扱った良作が印象的だった。
「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」は、原作の魅力もさることながら、みずみずしい描写と作品を包む温かさを演出した監督の金子由里奈にアッパレ。出演者を含め若い才能の萌芽(ほうが)を感じた。次作以降にも期待したい。
世界では「バービー」が話題に。こちらはうってかわって監督のグレタ・ガーウィグ、主演のマーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリングらスターぞろい。強いメッセージ性をエンターテインメントに昇華させたが、日本国内の興行成績は今ひとつ。そこに、なんともいえない日本らしさを感じる。
くる年編
「ゴールデンカムイ」(久保茂昭監督) 1月19日公開
「サン・セバスチャンへ、ようこそ」(ウディ・アレン監督) 1月19日公開
「オッペンハイマー」(クリストファー・ノーラン監督) 公開日未定
公開遅れに日本らしさ
「ゴールデンカムイ」は、「山女」に主演した山田杏奈がはまり役の予感。「オッペンハイマー」は、12月11日時点で2024年の公開が発表されたばかり。事情は察するが、他国と比べてここまで公開が遅れたことに、なんともいえない日本らしさを感じる。