3度の飯より映画が好きという人も、飯がうまければさらに映画が好きになる。 撮影現場、スクリーンの中、映画館のコンフェクショナリーなどなど、映画と食のベストマリッジを追求したコラムです。
2023.1.24
「THE FIRST SLAM DUNK」食トレで、めざせ全国制覇!管理栄養士の映画飯トレ
私は今、山王工業高校 対 湘北高校のバスケットボールの試合を見てきたところです。映画「THE FIRST SLAM DUNK」は心からそう言えるほどの臨場感でした。感動も冷めやらぬまま、映画館下のカフェでこの記事を書いています。アニメをわざわざ映画館で見なくてもいいと思っている方も、最近では映画館から足が遠のいている方も、バスケが好きな方も・・・・・・とにかくたくさんの人に映画館で「THE FIRST SLAM DUNK」を見てほしい!
もはや説明不要の「SLAM DUNK」は井上雄彦先生が、週刊少年ジャンプで連載していたバスケットボール漫画です。連載開始3年後にはアニメ化され、全国でバスケブームを引き起こしました。私はまさにスラムダンク世代ど真ん中。それまで1桁だったバスケ部の新入部員は40人を超え、私もその1人でした。「THE FIRST SLAM DUNK」は、原作・脚本・監督の全てを井上雄彦先生が務めています。その内容は少年ジャンプには掲載されたもののアニメ化されなかったインターハイでの山王戦と、宮城リョータの過去について描かれたものです。リョータ目線で描かれる映像は、昔テレビで見ていたアニメ版の「SLAM DUNK」とはまた違い、試合の緊張感や迫力、メンバーそれぞれの思い、空気感がそのまま伝わってくるものでした。すでにストーリーをわかっているはずの私も、涙なしには見られませんでした。
改めまして、管理栄養士の石松佑梨です。私はこれまでトップアスリートたちの専属管理栄養士を務めてきました。ここでは私の専門分野である食トレで、高校バスケの全国制覇をめざします。
ドリブルこそチビの生きる道
「SLAM DUNK」に登場するのは、桜木花道(188cm)、赤木剛憲(197cm)、三井寿(184cm)、流川楓(187cm)・・・・・・ と皆、長身。さらに競合チームの選手たちもみんな驚くほど大きく、陵南高校の魚住キャプテンは2mを超えています。そんな中、今回の映画で主役を務めるのは桜木花道ではなく、宮城リョータ(168cm)です。ポジションはポイントガード。ダントツのスピードとクイックネス(刺激に反応して速く動き出す能力)で、相手チームに切り込んでいきます。山王戦ではさらに鋭く低いドリブルで、相手ディフェンスを抜き去るのです。そんなリョータでも、やはり大きな選手たちにボールが渡れば、簡単に上を通されてしまいます。やはり、バスケは身長が高いほうが攻守とも有利な競技なのです。
寝る子は育つといいますが、これに関わるのが成長ホルモンです。下垂体から分泌される成長ホルモンは骨の先端に働きかけ、骨を成長させて身長を伸ばします。成長ホルモンの分泌量は1日の中でも変動しますが、眠りの深い夜間に最も多く分泌されるものです。睡眠時間が不足していたり、眠りが浅かったりすると、成長ホルモンは十分な分泌ができません。
とくに注意してほしいのが、小中学生で寝不足になっているケースです。実際、毎日深夜12時をすぎてから寝ているという小学生が多くいます。また、ダイエットを気にして栄養が足りないケースも問題です。身長は成長期を逃すとほとんど伸びません。資本となる強い体はこの時期で決まると言っても過言ではないのです。成長期の食事や睡眠をおろそかにしてしまうと、身長だけでなく、一生ケガをしやすい体とともに戦わなければなりません。
また成長ホルモンは、子供の成長のためだけでなく、大人にとっても重要です。疲労回復や美容のほか、近年では免疫機能や認知機能への関与もわかっています。成長ホルモンの材料となる栄養素(アルギニン、亜鉛)を多く含んでいる食品が肉類、大豆製品、うなぎ、ナッツなどです。
No.1"ガード"になるためには?
バスケはチーム競技である以上、どれだけ強い選手でも1人では勝てません。ドリブルやパスでボールをつなぎ、5人でゴールまで運ばなければならないのです。そこでチームの司令塔となるのがポイントガードというポジションです。常に冷静な状況把握能力と広い視野が求められます。
映画では、絶対的な王者である山王工業高校との戦いで皆、とても緊張しています。ただし心臓バクバクの状態では交感神経が高くなりすぎるため、普段通りの力は発揮できません。交感神経が強くなりすぎると、冷静さを保つ副交感神経の働きが抑制されてしまうのです。ベストな状態は、適度な緊張は持ちつつも、どこかで俯瞰(ふかん)して見られるようなクールさを保つことです。そのためには意識的に副交感神経を高める練習が必要になります。
映画では試合の前日に、マネジャーの彩子がリョータに"苦しくなったら、手の平を見る"というアドバイスをくれます(ナイス彩ちゃん!)。この続きは重要なシーンですのでここでは書きませんが、心が折れそうな時こそ、気持ちを切り替えるスイッチを持っておきたいですよね。
同じように、緊張を抑えるためにおすすめしたいのが食トレです。気持ちを落ち着けて安心感を与えるセロトニンの材料はバナナ、大豆製品、乳製品、米などに含まれるトリプトファンです。アスリートの補食としておなじみのバナナには、トリプトファンのほか、セロトニンの生成に必要なビタミンB6も含まれています。さらにリラックスできる食事環境を整えましょう。具体的にはいつ・どこで・誰と・何を・どのようにして食べるのかを考えた時に、できるだけ自分が心地よいと思える環境が理想です。どんなに疲れていたり、プレッシャーやストレスがあったりする時でも、食事時間だけはホッと安心できる時間にしてほしいのです。また試合前は特別なものではなく、いつも通りの食事を食べることで過度な緊張を生じないように心がけましょう。
あきらめたらそこで試合終了
基本的なバスケのルールとして、試合時間は1クオーター(Q)10分。それを4回行います。1Qと2Q、3Qと4Qの間には2分間の休憩、2Qと3Qとの間には10分間のハーフタイムが設けられます。つまり試合では40分間、走り続けるスタミナが必要です。中でもポイントガードは、運動量がもっとも多いポジションだといわれています。
食事は試合3時間ぐらい前までには食べておきましょう。食べたものは消化吸収されてはじめてエネルギーになります。試合開始から消化時間を逆算して食事をすることで、食べたものが試合中に栄養源として使える状態になるのです。その際、消化に時間のかかる揚げ物などは控えましょう。またハーフタイムでは即効性のエネルギー源で後半のスタミナを補給します。
ただし当日の食事ができることには限界があります。それよりも重要なのは日ごろの食事です。普段のハードな練習についていけるように、またケガをしないようにサポートしてくれるのが食トレの得意分野です。体をつくるタンパク質、エネルギー源となる糖質や脂質、これらを正常に機能させるためのビタミンやミネラルが不足しないようにバランスよく食べましょう。栄養素で考えると難しそうですが、主食+主菜+副菜+汁物+果物+乳製品の6点をそろえれば、栄養バランスは自然と整います。
いかがでしたか? 残念ながら"これを食べればシュートが確実に決まる"という食べ物はありません。しかし、食事内容が変わると明らかに疲れにくさを感じることができるのです。さらに毎日のスピーディーな疲労回復力が、練習の効果も高めてくれるでしょう。このような相乗効果が40分間の試合を最後まで戦い抜く力を育んでくれるはずです。
あきらめたら、そこで試合終了です。
めざせ、食トレで全国制覇!