「映画 太陽の子」

「映画 太陽の子」 ©2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ

2021.8.05

「映画 太陽の子」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

原爆について語られる時、その多くが日本は被害者という立場だ。しかし日本でも原爆開発は行われていた。黒崎博監督が、当時その研究に関わっていた科学者の日記を基にこの脚本を書いた。

1945年。京都帝国大学では修(柳楽優弥)ら学生たちが、軍に依頼された「原子核爆弾」の開発を急いでいた。だが実験は失敗を重ねる。そんな時、修の弟・裕之(三浦春馬)が戦地から一時帰宅する。幼なじみの世津(有村架純)とともに再会を喜ぶが、明るく振る舞う裕之が実は心に深い傷を負っていることを知る。一方で修も、科学者が兵器を作ることに複雑な思いを抱えていた。それでも裕之は戦地へ戻り、修は実験を続ける。そして8月6日を迎える。

1人の青年の家族との食卓や淡い恋、並行して描かれる兵器開発のための地道な実験。修がまっすぐな人だからこそ見えてくる、純粋な探求心の先にある狂気を、柳楽が見事に演じている。1時間51分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか全国で。(久)

ここに注目

戦時下の三者三様の葛藤と悲しみを描きながらも、世津だけは目の前の戦いではなく、未来に向けた思いを抱えている。地に足の着いた希望だ。戦後を見据えて力強く生きる瞳に女性ならではの反戦への思いを込めた。原爆開発でもこの国が加害者になりえたという視点も貴重だ。(鈴)

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