なぜ今「トノバン 加藤和彦」なのか 同時代伴走したベテラン音楽記者の目に映った〝昭和の天才〟
この映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」ができたと聞いた時、周囲の音楽関係者は「なぜ、今?」といぶかった。彼らは、加藤和彦が「天才的発想と行動力を持った音楽家」であると知っている人々である。いや音楽家としてだけでなく「人格」「存在」として付き合っていた方々もいる。ただ、話していて「確かに、彼のことを記録としてちゃんと残していなかった。僕らもじきにいなくなっちゃうから、そんなタイミングかもね」という結論に落ち着いたものだ。そして、こうやって映像を見ると「よくできている」という感想と「そんな人だったっけ」という気持ちが相半ばする。それは、彼と同じ時代を生きてきた人間の目と、今のこの時代から...
川崎浩
2024.7.03