この1本:「PERFECT DAYS」 物欲を離れ…幸せとは
映画の登場人物はたいてい悩んだり苦しんだりして、その果てに幸せや救いが訪れるものだ(不幸なまま終わることもよくあるけど)。しかしビム・ベンダース監督のこの映画の主人公、トイレ清掃員の平山(役所広司)は、居心地の良い環境で満ち足りた毎日を淡々と生きている。幸せってこういうことかも……とまで思わせる。「パリ、テキサス」などさすらう男たちの物語で名を成したベンダース監督、今作では居場所を見つけ迷わず生きる男の肖像を描き出す。 平山は古いアパートに1人暮らし。朝早く起きて身支度を整え、車で音楽を聴きながら通勤し、しゃれたデザインのトイレを丹念に磨き上げる。休憩時間に公園で木漏れ日を撮影し、居酒屋で食...