この1本:「LOVE LIFE」 流れ着いた孤独の先に
深田晃司監督の映画は、観客を安全地帯から追い立てる。「淵に立つ」や「よこがお」で、あなたが信じているものは本当に確かですかと、鋭い問いを投げかけた。今作でも平穏な日常を揺さぶって、足元の思わぬもろさをさらけ出す。 映画の始まりは、穏やかな家族ドラマの道具立て。妙子(木村文乃)は前夫との子供敬太を連れ、二郎(永山絢斗)と結婚して1年。二郎の両親を招いたパーティーの準備をしている。妙子は役所の福祉部署の頼れる存在で、妻としても母としても申し分ないようだ。 しかしすぐに、画面にピリピリと緊張が走り始める。結婚を認めない二郎の父親は、まともに妙子の顔も見ない。妙子に好意的なしゅうとめですら、胸をえ...