時代の目:ドンバス 属性ではなく個の尊重を
2014年にウクライナからの「独立」を宣言し、親ロシア勢力の支配下にある東部ドンバス。そこでの出来事を点描する、エピソード集の趣だ。映画はフィクションでロシアによる侵攻前なら見え方も違ったろうが、現在の情勢と照らし合わせれば、抑圧と暴力が日常と化した生活と、精神の荒廃が生々しく伝わってくる。 バスの中でメークを施された役者たちが、兵士に促されてカメラの前で証言する。フェイクニュースの収録なのだ。あるいは地下シェルターの中で、避難した人々が湿気と不自由な生活を訴える。通りではウクライナ義勇軍の捕虜がさらし者にされ、道行く人たちの罵声を浴びる。詳しい説明はなく、風景と人々を淡々と映し出すだけ。デ...