「カンフースタントマン 龍虎武師」 ©ACME Image (Beijing) Film Cultural Co., Ltd.jpg

「カンフースタントマン 龍虎武師」 ©ACME Image (Beijing) Film Cultural Co., Ltd.jpg

2023.1.13

特選掘り出し!:「カンフースタントマン 龍虎武師」 黄金期支えた度胸と悲哀

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

1980~90年代、香港製アクション映画は大人気だった。ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポーらカンフースターが並び、物語はたわいなくてもアクション場面が派手。危険なアクションで映画を支えたスタントマンに焦点を当てたドキュメンタリーだ。
 当時の香港映画、とにかく痛そう。掌底や蹴りを食らって派手に吹っ飛ぶ、背中から地面にたたきつけられる。高い所から落ちる、もっと高い所から落ちる。コンピューターグラフィックスのない時代、すべて生身。スタントマンたちは「ノーと言えば仕事がなくなる」「他のチームに負けたくなかった」と振り返る。よくぞ生還できたものだ、とあきれるやら感心するやら。とはいえけがは茶飯事、命を落とした人もいたという。
 彼らの度胸と技量に支えられた黄金期。マンネリ化で失速し、中国の台頭で香港アクション界も下火という。ヒット作を量産した映画会社ショウ・ブラザーズもゴールデン・ハーベストも衰退。後の人生で苦労した人も多かったようだ。あんな無鉄砲なアクションは二度とできまい。時代のあだ花の栄光と悲哀が漂う。ウェイ・ジェンツー監督。1時間32分。東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田ほかで公開中。(勝)