ミス・マルクス ©2020 Vivo film/Tarantula Photo by Emanuela Scarpa

ミス・マルクス ©2020 Vivo film/Tarantula Photo by Emanuela Scarpa

2021.9.02

ミス・マルクス

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

経済学者カール・マルクスの末娘エリノア(ロモーラ・ガライ)の波乱に満ちた半生を描いた。エリノアは勝ち気で聡明(そうめい)であり、労働者の職場の環境改善を訴え、「女性は男性の奴隷ではない」と男女平等を唱える活動家。一方で、浪費家で女遊びを繰り返す劇作家の恋人エドワードとの生活に疲れ傷ついていく。

1800年代後半に家庭内での女性の服従や児童労働の残酷さを指摘し、権利向上にまい進するエリノアの先進性に目を見張る。虐げられた女性の権利、束縛や社会的な因習からの解放の主張は古くささなど全くなく、時代を超えて現代に通じるものがある。実生活では政治的信念とは裏腹にエドワードの不実に苦悩し孤独を募らせ痛々しいが、矛盾を抱えて生きる姿は生きる難しさと同時に人の体温を感じさせ、背中を押してくれる。ロック調の音楽は感情の覚醒だけでなく、現代との橋渡しにもなっている。スザンナ・ニッキャレッリ監督。1時間47分。東京・シアター・イメージフォーラム(4日から)、大阪・シネ・リーブル梅田(17日から)ほか。(鈴)

異論あり

エリノアは社会の不平等と闘う一方、抑圧的な父親や、浪費家で女癖が悪いエドワードへの態度は曖昧だ。分かりやすい英雄にとどめず、複雑な内面を描き出す。女性の社会的位置づけの反映だろう。一方でつかみどころがなく、カタルシスも用意されないことには戸惑いも。(勝)

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