第29回プサン国際映画祭で「さよならのつづき」が上映され、舞台あいさつする黒崎博監督、有村架純、坂口健太郎

第29回プサン国際映画祭で「さよならのつづき」が上映され、舞台あいさつする黒崎博監督、有村架純、坂口健太郎 提供写真

2024.10.09

「さよならのつづき」坂口健太郎と有村架純「日本との距離縮めるきっかけに」 プサン国際映画祭

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勝田友巳

勝田友巳

韓国・プサンで開かれている第29回プサン国際映画祭で、Netflixドラマ「さよならのつづき」が披露され。主演の坂口健太郎と有村架純が大歓迎を受けた。韓国での人気を感じさせた2人に聞いた。

亡くした恋人の記憶が、別人に転移していた

物語は、北海道が舞台。さえ子(有村)の恋人の雄介(生田斗真)が事故で亡くなり、その心臓が成瀬(坂口)に移植される。移植後の成瀬は、苦手だったコーヒーを飲めるようになったり、ピアノが弾けるようになっていたりと、雄介の記憶が転移されていた。さえ子は成瀬に雄介の心臓が移植されたと気づき、2人は次第に引かれ合うのだが……。脚本は岡田恵和。プサンでは1話と2話が連続上映され、坂口、有村と黒崎博監督が舞台あいさつや質疑応答に臨んだ。


しっかり受け止めてくれた

――映画祭での反応はいかがでしたか。
坂口 始まる前はドキドキしていたけれど、トークセシッョンなど温かい雰囲気で、朗らかに受け入れられた感覚がありました。
 
有村 映画も、私たちの話も、関心を持ってしっかり受け止めてくれたのがうれしかったですね。
 
――不思議な設定の物語ですね。
有村 岡田さんの渾身(こんしん)の作品で、挑戦もしていると感じたので、私も挑戦できるかと考えました。ファンタジーのようですが、実際に記憶転移があるという説もあって、設定にはリアリティーがあると受け入れてました。
さえ子は雄介を失ったけれど、心の中では生き続けている。彼の心臓を移植された男の人に出会ったら、もっと会いたい、触れたいと求めてしまうと思んです。でも、最初は雄介を求めていても、目の前にいるのは成瀬さん。心がぐちゃぐちゃになって、どちらが好きか分からなくなっていく、言葉にすることができないような感情に陥っていったのかなと思いながら演じていました。
 
坂口 自分の中に、過ごしたことのない時間、ないはずの記憶があるという表現は難しいと思いました。別人に見せたくなかったんです。成瀬はどうしてそんな記憶があるのか、なんでそんな言葉が出るのか分かんないし、困惑するだろう。2人の感覚がうまく混ざればいいと思っていました。それでも1人の人に心が引っ張られる。正解はないと思っていたので、現場で、スタッフの意見も聞きながら、いいものを抽出して演じました。
 
――長期間にわたる撮影となりました。
有村 映画やドラマを作ってきたスタッフが集まったことは同じでも、半年というぜいたくに使える時間があったので、気持ちに余裕ができてしっかり台本と向き合えましたね。
 
坂口 天候などはあらがえないものですが、今回は「仕方ない」ではなく、いい光で撮るために待った。その結果、美しい映像が撮れたというところはたくさんありました。
 

「価値」上げることがドラマや映画を変える

――作品は世界に向けて配信されます。
有村 さえ子だけではなく女性たちが、みんな無邪気で素直なキャラクターだったんです。今まで出会った役の中でも、感情がよく分かりました。それとセリフが、翻訳しやすいようになっていたみたいです。日本語はあいまいな表現が多いですが、岡田さんのスタイルを崩さず、分かりやすい言い回しやセリフにされたのかと感じました。
 
坂口 ただ、日本人らしい、真意とちょっとずらしたことを言うセリフはふんだんにあった。そこは日本人のこまやかさや相手をおもんぱかる気持ちで、海外の人が見たら、本心をもっと言えばいいじゃん、と思うかもしれないけれど、感情の機微みたいなものを楽しんでもらえたらいいんじゃないか。エネルギッシュな新しい女性像と合わせて、いい部分がたくさんあると思いました。
 


――こうした作品や映画祭での上映は、日本を海外に発信することにつながります。
有村 携わった作品がどれくらい海外で見られているのか分からないけど、「あの作品が好き」と言ってもらったりすると、届いてるんだなとうれしくなります。映画祭には限られた作品が出品されて、それも大事だと思いますが、もっと広く、いろんな作品が届いたらいいと思うし、海外で話題になったことが、日本でもっと広まるといいですね。
 
坂口 国の垣根が低くなって、世界の人に日本の作品が届くようになったことはありがたいし、喜ばしい。最初は驚きがあったけれど、今はその価値を上げることが大事だと思っています。「坂口くんが好き」というきっかけで作品を見て、日本との距離感が縮まる、「架純ちゃんが出ているから」と見た作品で別の俳優さんを見つける。それってすごくいい影響だと思う。そうして価値が上がったものを日本に持ち帰れば、ドラマや映画の何かを変えるパワーになる。今回のプサンの盛り上がりもすごかった。これからそれを、どう消化するかが大事だし、その機会を増やしていかなきゃいけないと思います。
 
有村 健ちゃんは20代からアジアで人気があって、日本とつなげてくれる貴重な懸け橋になってくれるんじゃないかな。
 
「さよならのつづき」は全8話。11月14日から、Netflixで独占配信される。

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ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

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