ふたつの部屋、ふたりの暮らし  © PAPRIKA FILMS / TARANTULA / ARTEMIS PRODUCTIONS - 2019

ふたつの部屋、ふたりの暮らし © PAPRIKA FILMS / TARANTULA / ARTEMIS PRODUCTIONS - 2019

2022.4.15

ふたつの部屋、ふたりの暮らし

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

南仏モンペリエのアパルトマンの最上階で、向かい合う部屋に暮らすニナ(バルバラ・スコバ)とマドレーヌ(マルティーヌ・シュバリエ)。2人は長年ひそかに愛し合ってきた恋人同士で、部屋を売ってローマへ移住することを考えていた。しかし、マドレーヌは子どもたちに真実を伝えることができず、突然脳卒中で倒れてしまう。

女性同士の高齢カップルが愛を貫き通す姿に、スリリングな展開を交えて描いた。無理解を象徴するような部屋のドアと開閉音、隔絶された設定も効果的。冒頭の少女2人の映像がしっくりとなじんでいないのが気になった。2人が愛を育んできた場所が部屋から出て解放されるかと思いきや、再び元に戻ってしまう描写に、同性愛や同性婚が進んでいると思いがちなフランスの現実を見た気もした。介護や病気、孤独という避けられない障壁を見せつつ、純粋な愛のドラマに心をつかまれた。セザール賞新人監督賞のフィリッポ・メネゲッティ監督に要注目。1時間35分。東京・シネスイッチ銀座、大阪・テアトル梅田ほか。(鈴)

ここに注目

高齢のレズビアンカップルという設定から、挑戦的。関係を感傷的に描くのではなく、不自由な体のマドレーヌと、周囲の目を気にするニナの葛藤に焦点を当てた視点にも逃げがない。その分いささか生硬だが、メネゲッティ監督の真摯(しんし)な姿勢に、女優2人がよく応えた。(勝)

バルバラ・スコバインタビューはこちらから。

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