モーリタニアン

モーリタニアン

2021.10.28

モーリタニアン 黒塗りの記録

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

モーリタニア人の青年モハメドゥ(タハール・ラヒム)は、米同時多発テロの首謀者としてグアンタナモ収容所に拘禁されるが、裁判が開かれていない。人権派の弁護士ホランダー(ジョディ・フォスター)は弁護を買って出て、手記を書くよう説得する。一方、米政府は死刑にするため米軍のスチュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)に起訴させようとする。

実話の映画化である。グアンタナモの陰惨な拷問や非人道的な自白の強要は後半に集約し、政府や軍と弁護士との対決を軸にスリリングさを高める社会派サスペンス。テロへの報復の主張が圧倒的だった時代に、国家犯罪を非難したアメリカの知性、理性を前面に打ち出している。それでも、驚嘆に値するのはモハメドゥの不屈の精神と祈りの力。裁判の場面で、彼が語る言葉のなんと重いことか。怨念(おんねん)や怒り、恐怖心など感情が渦巻く物語をジョディらの抜群の演技力が先導した。ケビン・マクドナルド監督。2時間9分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(鈴)

ここに注目

スクリーンから遠ざかっていたジョディ・フォスターの主演作を見るのは何年ぶりだろう。年輪を重ねた演技はすごみたっぷり。被告へのあわれみや自らが信じる正義のためではなく、不当拘束を問題視して弁護を引き受け、ひたすら真実を追い求めるキャラクターがはまり役だ。(諭)