世界3大映画祭の一つ、第75回ベルリン国際映画祭の話題を現地からお届けします。日本映画の最新作も上映され、映画人が現地入り。ドイツや欧州を取り巻く政治情勢に揺れてきたベルリンは、今回からプログラムディレクターが交代し、新体制の船出となってそのかじ取りに注目が集まっています。
第75回ベルリン国際映画祭で「海辺へ行く道」の上映に臨む横浜聡子監督(左)と主演の原田琥之佑2025年2月17日、勝田友巳撮影
2025.2.18
ベルリンデビュー 15歳 原田琥之佑「笑いが聞こえてホッとした」 「海辺へ行く道」ベルリン国際映画祭で上映
第75回ベルリン国際映画祭で17日(日本時間18日)、日本映画「海辺へ行く道」が上映され、現地入りした横浜聡子監督と主演の原田琥之佑が観客との質疑応答に応じた。原田は前日深夜に到着し、翌日には帰国する弾丸参加。それでも、さすが15歳。上映会場を包んだ温かい拍手に感激、「安心しました」と元気なところを見せていた。
海辺の町 中学生の一夏をシュールに
上映は若い世代に向けた作品を集めた「ジェネレーション部門」。「海辺へ行く道」は三好銀の漫画が原作で、海辺ののどかな町を舞台とした、中学生の奏介(原田)が主人公の群像劇だ。ファンタジー調のエピソードにシュールな笑いを織り交ぜながら、少年たちの一夏を描いている。
横浜監督はかねて三好の漫画のファンで、「海辺へ行く道」の単行本の帯にコメントを寄稿。映画化を温めていた和田大輔プロデューサーがこれを見て、監督を依頼したという縁で実現した。横浜監督は「プロデューサーに声をかけられて、6年前から進めていた。三好さんの漫画が大好き」と経緯を振り返った。原色を配した鮮やかな色遣いには「撮影の月永雄太さんと、時代を限定されない浮遊した感じを意識した色を作った」と明かした。
町はアーティストの移住を推進しているという設定で、奏介も美術部に所属し、夏休みにいくつもの作品と関わっていく。芸術を題材としたことについて「人生で困ったこと、どうしていいか分からないことに立ち向かうのに、本や絵画、思想から勇気をもらった。奏介にとって芸術がそういう存在であり続けてほしかった」と答えて大きな拍手を浴びた。
「海辺へ行く道」©︎2025映画「海辺へ行く道」製作委員会
見違える成長ぶり「身長が10センチ伸びました」
原田は小豆島での撮影を振り返って「自然が美しくて、奏介にどっぷりと浸れた。めっちゃ自然な感じでした」。かわいらしい少年だった画面の中とは見違えるように背が伸び、大人の雰囲気。「撮影時は13歳で、今は15歳。撮影した時から身長が10センチ伸びました」と明かすと、客席から感嘆の拍手が。
上映後、横浜監督は「これまで関係者にしか見せていなかった。笑いが起こってうれしかった。何かが伝わってるのかな」と安心した様子で話した。原田も「上映直前まで、大丈夫かなと不安があったけど、笑いが聞こえてホッとした」と笑顔を見せた。
ジェネレーション部門での上映に横浜監督は「もちろん、年代や性別を意識して作ったわけではないけれど、主人公たちと同年代、同時代の子がどのように受け取るのかも興味深い」と話していた。