©シロクマ・フィルムズ

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2024.4.12

「夢見びと」という題名は夢を追いかける私にとっては大好物な題材! 

誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。

堀陽菜

堀陽菜

本音を言ってしまえば、常に「うーん・・・・・・」という感じだった。

役者、物語、作品のリズム、すべてにおいて追い付くのに必死だった。普段、ミュージカルをあまり見ない私にとって、新天地に足を踏み入れた気持ちにさせてくれる映画「夢見びと」について語っていきたいと思う。
 

「偽装妻」をレンタルファミリーサービス

父親が危篤に陥った漫画原作者のマサ。父を元気づけるために彼は「偽装妻」をレンタルファミリーサービス会社から派遣してもらおうと考える。妻役に雇われたのは舞台女優を夢見る女性であった。「カナコ」と名乗る彼女はマサの父のために妻役に徹し、レンタル女優としての仕事をこなすが、次第にうそをつき続ける演技生活に幻滅してしまう。そして、自分の夢見た舞台女優のチャンスを目前にしたカナコが選んだ選択とは・・・・・・。
 

大好物な題材

私がこの作品を見ようと思った決め手はズバリ題名である。「夢見びと」という題名は夢を追いかける私にとっては大好物な題材である。劇中に出てくる漫画原作者のマサは小説家を、カナコは舞台女優を目指す夢見びとである。

これは私の経験からの見解だが、夢と向き合う人は常に自分と向き合わなければならない。〝自分って何だろう〟みたいな哲学者顔負けの思考を頭の中でグルグルさせている。よく就活生がこの悩みと直面するように、夢見る人々は何歳になっても長きにわたって悩み続けていると思う。カナコもそうなんじゃないかなってちょっと思ってしまった。レンタル女優として「演技=うそ」で他人の人生に介入してしまうことに幻滅した彼女は本当の自分の生活を見直すことに行き着いたのではないだろうか。その姿には現実と非現実のはざまで困惑を隠しきれない人間の弱さが感じられた。
 

善意のうそ

「うそ」という言葉はこの作品の大きなキーワードだ。しかし、決して全部がネガティブに使われているわけではない。マサがカナコを利用して父親に対してうその結婚話を作り上げたのは、父のことを大切に思ったからこその、いわば「善意のうそ」というものだ。

うそというものは非常に複雑でいろんな側面を持っているとつくづく実感する。だって善意の嘘は常に一方通行の思いしかないし、たとえ善意による行為であったとしても受け取る側に「うそ」だとバレてしまった瞬間に、善か悪かの答え合わせをされてしまう。まるでギャンブルのようだ。それでも人は善意のうそをつく。正確には己の中での善意のうそだが・・・・・・。この話に着地点をつけるとすれば、善か悪かどっちに転がろうとも、相手を思う気持ち自体はうそではないことは確かだという点は理解しておきたい。
 
そしてもう一つのキーワードが、作中にふんだんに使われているミュージカル要素だ。歌とダンスでしか自分の気持ちを素直に表現できないマサとカナコにとってミュージカルパートは実に生き生きとしている。

本作を鑑賞中ずっと感じていた違和感があった。役者の演技がまるで外国映画の日本語吹き替え版作品を見ているような感覚。物語も舞台も日本なのにずっと海外映画を見ているようだ。あるいは舞台ミュージカルをそのままカメラで撮ったような感覚と言えば分かりやすいだろうか・・・・・・。普段ミュージカル映画を見ない自分にとって「これがミュージカルか・・・・・・!」と驚きと発見があった。

歌とダンスは実に感情表現に効果的であると私は思う。日常生活で考えると小っ恥ずかしいが、普段アイドル活動をしている身の上から言うと歌とダンスの効果はとても大きい。この作品の登場人物、マサとカナコの心情が複雑だからこそ、歌とダンスで感情を爆発させたコントラストがすてきだと感じた。
 

作品に入り込めた

物語の率直な感想としては、ラスト部分のマサとカナコに「人の人生に関わっているのに自己本位すぎじゃ・・・・・・?」とツッコミを入れたくもなったが、これは私自身が年を重ねればまた感じ方も変わってくるかもしれないと、新たな楽しみが一つ増えたということだ。何より物語に入り込んでツッコミを入れたくなるぐらい、一人の観客として作品に入り込めたのがうれしかった。見慣れたジャンルとは異なるテイストの作品を知れた映画であった。

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ライター
堀陽菜

堀陽菜

2003年3月5日、兵庫県生まれ。桜美林大学グローバルコミュミュニケーション学群中国語特別専修年。高校卒業までを関西で過ごし、大学入学と共に上京。22年3月よりガールズユニット「MerciMerci 」2期生として活動開始。
好きな映画は「すばらしき世界」「スピードレーサー」「ひとよ」。幼少期から兄の影響で色々な映画と出会い、映画鑑賞が趣味となる。特技は14年間続けた空手。