©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

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2022.6.16

腐女子じゃなくても突き刺さる! 平凡な毎日をアゲる「推し事」のススメ

誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。

青山 波月

青山 波月

大好きだ。BLが。(デジャブ)
ある日、6月公開予定の映画一覧を眺めながら、「何の映画を見ようかな〜」と考えていた私の目は「BL」(ボーイズラブ)の2文字を逃さなかった。多分眼球にBとLに敏感な察知センサーでも搭載されているのだろう。
以前、「チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」についての記事でBL愛を存分に語らせていただいたが、今回はそんな私が書くべき、いや、書かなければいけない!と感じたBLにまつわる映画について語らせていただきたい。


BLがつなぐ、“年の差”腐女子の友情劇

タイトルかと勘違いするほどデカデカとフライヤーに書かれた見出しが特徴的な映画「メタモルフォーゼの縁側」、ざっくり言うとBL漫画という趣味を通してつながった58歳差の友情を描いた作品である。
ボーイズのラブ自体が描かれているわけではないため、そこの腐女子よ(腐女子とはBLを愛する女子のこと)、一旦鼻の穴を広げるのはやめてください。そう、この作品は私たち腐女子側を描いた作品(「私たち」って勝手に私と一緒にしてすみません。そのつもりで書かせていただきます)。

シネマの週末「メタモルフォーゼの縁側」

大のBL漫画好きなのに周りの目を気にするがゆえに腐女子友達がいなかったうららと、夫に先立たれ一人で暮らしていたところにBL漫画という楽しみができた雪。二人にとって、お互いの存在は奇跡的に巡り合えた「ヲタ友」だった。今までと変わらぬ日常にささやかな幸せが訪れた二人が決意した挑戦とは……?!

「好き」の追求が幸せを探り当てるカギ

突然ですが、皆様は「日々生きていくうえでの楽しみ」ってありますか?
これがあるから仕事を頑張れるとか、灰色だった世界がこれのお陰で色づいた、とか。そういう「推し事」ってありますか?
私はあります! 「映画の推し事」って連載コラムまで書かせてもらうほど、もちろん映画を見ることが大好きで、私の日常を豊かにしてくれるし、言うまでもないけどBL作品をたしなむことも毎日を生きる糧になっている。

この「メタモルフォーゼの縁側」に登場する雪は、夫に先立たれ、これといった趣味もなく、人生の終わりがちらつく頃にBL漫画と運命的な出会いをする。ある日突然、強く心ひかれるものに出会った時の胸の高鳴り、あの高揚感。BL漫画に出会った時のこのどうしようもない胸のドキドキを、雪が「なんか…応援したくなるのよ!」と表した時、私は大共感すぎて首がもげそうなくらい大きくうなずいた。
「好き」の原動力ってすごいのだ。余生をただぼんやりと生きるつもりだった雪が、夫の仏壇に向かって「ごめんね、まだそちら側に行けないわ」と話すほど、「好き」とは誰かの生きがいになる。
大学進学を控えた高校3年の年に、勉強そっちのけで夢中になれることを見つけたうららは、人生において受験よりも大切な経験を「好き」をとおして得ることができた。

雪とうらら。この二人を見ていると、好きなことに夢中になれる毎日って楽しくて幸せなものなのだと感じられる。好きなことがある人は、とことん夢中になればいいと思う。人目なんて気にせず、思いっきり愛して推して幸せになればいい。愛は減るもんじゃないんだから(金は減るかもしれないが、またそれも愛)。だから!まだ推し事が見つかってない、そこのあなた。いつか来たる運命の出会いのために、思いっきり愛せるための貯金をしとき!!
上辺だけの人間関係や、いつ終わるかわからない恋人よりも、裏切らないもの、好きなものを愛して、思いっきり自分を甘やかしてください。



とりま、やってみる! それだけで構わない

今後の人生の進路が大きく分かれる17歳。私が17歳の頃は、あっち行ったり、こっち行ったり、どこに行けば正解なのか全然わからなかった。今もはたして正解の道を歩けているのかわからないままだけれど。
この作品の主人公・うららも、そんな私とそっくりな17歳の女子高生。真っ白な進路調査票。海外に留学する同級生や、「お金のことは気にしなくていいからね」と言う親。わかる、わかるよ、全部がささいなことなのだけど、そんなささいなことが積み重なってプレッシャーが人知れず大きくなる。

うららは、キラキラな恋愛をして大人への階段を上ってしまう幼なじみや、美人で人気者の留学を目指している同級生など、何者かになろうとしている周りに勝手に劣等感を抱いて卑屈になってしまう。そんな時に雪から「うららさんは自分で漫画描きたいと思わないの?」と一言。
時に大人っていうのは、こっちの気も知らずに大胆なことを言うものです。でも、そんな無謀な誘いにうそでも乗ってみるのがまた子供の役目というもの。「才能がなかったら漫画描いちゃいけないの?」by雪。またまた〜、雪さんそうやって子供を口説くのがうまいのだから。でも、この雪の言葉は、うららに対して才能があるってうそをついたり、才能があるかもって期待させたりするわけではなく、「大体の人が才能なんてないのだから、やるだけやってみりゃいいじゃん」と言ってくれているようで温かいのだ。

別に才能なんて必要ない。そもそも才能なんてものは存在しないのかもしれない。「凡人は、とりあえずの精神」とうららの母も言っていた。とりあえず目の前のことを頑張ればいい。とりあえず以上のことを求めなくていい。とりあえずできたら、それはもう才能。今時で言う「とりま〜」です。とりま生きているだけで偉い。後先考えずに、17歳なんてやりたいことを、とりまやってみたらいいじゃんって!

いつ誰だって、夢中になれれば人生アガる!

今回の私の記事は、まるで自己啓発本のように諭しているムカつく文章が多いけど、これは全部この映画「メタモルフォーゼの縁側」が私に教えてくれたことだ。「BL映画じゃ〜!」と鼻の穴広げて映画館に向かった私だったが、キュン♡よりもギュンッッ!!と心をつかまれるような胸アツ映画に出会うという予想外展開だった。こんなにも私たちを幸せにしてくれるBL作品が存在する世界線に生まれて良かったと、なぜか深い境地にまで達して帰路に就かせていただいた。

きっと腐女子が見たら、大共感の嵐になること間違いなし。非腐女子が見たら、腐女子になりたくなること間違いなし(女子だけと言わず男子もね)。何かに夢中になっている人、夢中になれる何かを探している人、別になんでもない人、全人類を全肯定してくれる温かい作品なので、ぜひこのエキセントリックで尊い友情を見にきてください!

本日より全国公開。

メタモルフォーゼの縁側

さえない女子高生・佐山うららと、夫に先立たれ一人暮らしの老婦人・市野井雪。年齢も生きてきた環境も肩書も……何もかもが違う2人をつないだのは、ボーイズ・ラブ(BL)! 雪がBL漫画の表紙に一目ぼれしたことをきっかけに、決して交わるはずのなかった2人の人生がゆるやかに優しく交錯し、やがて58歳差の確かな友情が芽生える。BLがつないだ2人の友情は、無謀とも思える挑戦へと向かい、やがてある“メタモルフォーゼ”(=変身)を遂げていく――。

ライター
青山 波月

青山 波月

あおやま・ なつ 2001年9月4日埼玉県生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科3年在学中。
埼玉県立芸術総合高等学校舞台芸術科を卒業後、現在は大学で映画・演劇・舞踊などを通して心理に及ぼす芸術表現について学んでいる。
高校3年〜大学1年の間、フジテレビ「ワイドナショー」に10代代表のコメンテーター「ワイドナティーン」として出演。
21年7月よりガールズユニット「Merci Merci」として活動開始。
好きな映画作品は「溺れるナイフ」(山戸結希監督)「春の雪』(行定勲監督)「トワイライト~初恋~」(キャサリン・ハードウィック監督)
特技は、韓国語、日本舞踊、17年間続けているクラシックバレエ。
趣味はゾンビ映画観賞、韓国ドラマ観賞。

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