「メタモルフォーゼの縁側」©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

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2022.6.17

メタモルフォーゼの縁側 

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

内気な女子高生のうらら(芦田愛菜)の趣味はボーイズラブ(BL)漫画を読むこと。彼女がアルバイトをする書店で絵柄にひかれてBL漫画を手にした75歳の雪(宮本信子)は、初めて知った世界に魅了される。ふたりは共通の趣味を通じて、友情のようなものを育んでいく。

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数々の漫画賞を受賞している鶴谷香央理の同名コミックを、岡田恵和の脚本で映画化した。年齢も性別も境遇も、時には国境も超えて一瞬でつながる高揚感。ジャンルを問わず推しがいる人には近しい〝あの感覚〟が、みずみずしく閉じ込められている。その関係を維持するかどうかではなく、確かに感じたつながりを人生にどう生かすのか。芦田が表現した内気さと、出会いにより背中を押されて扉を開ける瞬間。宮本が見せる経験に裏打ちされた優しさと少女のような笑顔がまぶしい。

日常の様子も丁寧に切り取られ、縁側というスペースが風通しのいいふたりの関係を象徴しているかのようだ。狩山俊輔監督。1時間58分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)

ここに注目

好きなものを堂々と好きと言えない半生を送ってきた身としては、うららの言動に共感するばかり。だが、75歳の雪も、クラスのヒエラルキー上位らしい英莉も、漫画家として成功したコメダ優も、好きなものに全力を傾けている時の姿はみんな同じだ。みんなかわいいのだ。(久)

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