第76回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞 片山友希

第76回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞 片山友希

2022.2.18

スポニチグランプリ新人賞 片山友希「茜色に焼かれる」 この映画で賞を取りたいと、純粋に思った

日本映画大賞に「ドライブ・マイ・カー」

男優主演賞 佐藤健「護られなかった者たちへ」
女優主演賞 尾野真千子「茜色に焼かれる」


第76回毎日映画コンクールの受賞作・受賞者が決まりました。2021年を代表する顔ぶれが並んでいます。受賞者インタビューを順次掲載。
1946年、日本映画復興を期して始まった映画賞。作品、俳優、スタッフ、ドキュメンタリー、アニメーションの各部門で、すぐれた作品と映画人を顕彰しています。

勝田友巳

勝田友巳

ちゃんと悩んでちゃんと考え 少しだけ自信ついた

 
ここ数年、めきめきと頭角を現した片山友希。「茜色に焼かれる」の、主役の尾野真千子に食らいつく演技でスポニチグランプリ新人賞を受賞。出演歴を見ればあそこにもここにも、と気付くものの、作品の中ではこの人と分からないほど役に溶け込んでいる。小学生の時に女優を志して以来、一直線にここまで来た。胸に秘めていた大きな夢も、この機に初公開!
 
「賞のために演じるのではないので、賞を取りたいなんて言ってはいけないと思っていたんですけど、完成した『茜色に焼かれる』を見て、こんな映画で賞を取りたいって、純粋な気持ちで思えたんです。だから、ほんとにうれしく思っています」
 
「茜色に焼かれる」で演じたケイは、重い持病があり心に傷を抱え、性風俗で働いている。主人公の良子とともに、現代日本の理不尽な不平等を背負う役どころだ。オーディションで石井裕也監督に「覚悟は何ですか」と聞かれて答えられず、それでも合格。喜んだものの、悔しい思いも抱えながら撮影に臨んだ。
 
「自分はセリフを覚えてしゃべってるだけで、意味を考えられているんだろうかという迷いが、ずっとあったんです。石井監督に覚悟を聞かれて答えられず、私は悩みと全然向き合ってないと思って。撮影が始まる前も台本を読んでる時も、撮影中も終わってからも、自分は大丈夫だったかという不安がすごくあった。ちゃんと悩んでちゃんと考えた作品が、初めてだったんです」
 
石井監督は撮影現場で、「やってみて」とまず俳優に演じさせる。「難しい、っていうか、怖い。自分のセンスが問われるから。でも途中から、不安とか怖いという気持ちにちゃんと向き合うことが、わたしの覚悟かなと思って、拭いきれなくてもいいやと。背筋がずっと伸びてる状態でした」。夢中で演じ、完成した作品を見て、衝撃を受けた。「これはとんでもない映画になったって」


「尾野さんヤバっ」 一緒に受賞めちゃくちゃうれしい

別の授賞式で石井監督に、「映画に貢献してくれたと思っているから、賞取ってくれなきゃ困るんだよね」と言われたという。毎日映コンでは、尾野が女優主演賞、共演の和田庵と一緒にスポニチグランプリ新人賞。「一緒に受賞できて、めちゃくちゃうれしいです」。尾野の演技には圧倒された。
 
「映画が始まって、ケイが出てくるまで30分ぐらいあるんですが、そこまで全部、『尾野さんヤバっ』て思うシーンばかりでした。尾野さんの受賞は当然だと思う。和田君は不思議な子なんですよ。初顔合わせのシーンで何回もやり直しさせられたのに、顔色を変えずにはいはいと続けて。でも実は、その後メチャクチャ落ち込んだらしくて。全然読み取れないんですよ」。受賞で「少しだけ自信がつきました。この作品で、人間的にも成長できたかな」。
 
女優を志したのは小学生の時だが、実は消去法。「テレビに出たいと思って、でも勉強できないからアナウンサーはダメ、歌も下手で歌手とアイドルが消えて、うまいコメントは言えないのでタレントもなくて」、残ったのは女優だった。しかしそこからは、ブレずに一直線。中学2年で俳優養成所に入り、18歳まで在籍したが地元の関西では仕事がない。20歳で上京し、コツコツと役を積み重ねてきた。「高校卒業から2年間、周りが進路を決めていく中でひとりアルバイト生活で、その間はしんどかった」。しかし、やめようとは思わなかったという。「1回決めたから。占いで意志は強いって出ました」
 

カンヌのレッドカーペットを歩きたい

映画への出演が続く。フランス映画が好きなのだという。「女優になりたいと思いながら、実はそんなに映画見てこなかったんです。上京してから見始めて、すごく好きになった。ドラマの現場でスタッフに、映画の人と言われることが、けっこうあるんですよ。そう認識されてるのがうれしいです」
 
女優としての夢を聞くと「恥ずかくて言えなかったんですけど、願い事は口に出すべきだと思って」と前置きして、「カンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩きたいです」。大きな夢に、一歩ずつ近づいている。

茜色に焼かれる

夫を事故で失った良子(尾野真千子)は、ひとりで息子を育てている。コロナ禍で営んでいたカフェが閉店し、スーパーのバイトと風俗店での仕事を掛け持ちして生活費をまかない義父の施設入居費を払う。良子は「夫の死への謝罪がない」と賠償金の受け取りを拒否し、苦労や屈辱を「頑張りましょう」と受け流す。第68回「舟を編む」で日本映画大賞、監督賞の石井監督が、今の世相を取り込んで、懸命に生きる母親の姿を描く。

ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

カメラマン
ひとしねま

佐々木順一

ささき・じゅんいち 毎日新聞写真部カメラマン