ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち  (C)2021映画『ヒノマルソウル』製作委員会

ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち (C)2021映画『ヒノマルソウル』製作委員会

2021.6.17

時代の目:ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~ 栄冠なき闘いにエール

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

パンデミックで公開が丸1年延期されているうちに、五輪への見方や接し方も大きく変わりつつある。1998年の長野冬季五輪が舞台だが、東京五輪直前(?)となった今から見ると遠い昔の、ある時代の物語にも見えてくる。

94年のリレハンメル五輪スキージャンプ団体で、日本は原田の失敗により金を逃し銀メダル。メンバーだった西方は長野五輪での雪辱を誓うが、腰の故障で代表から落選。失意の中、屈辱を感じながらもテストジャンパーとして参加する。原田ら日本は1本目で4位となるが悪天候で競技は中断。映画は猛吹雪の中、テスト飛行した25人のジャンパーに焦点を当てる。

西方や原田ら選手の挫折や嫉妬、後悔など感情の渦はセリフや音楽など過剰な演出で少しさめてしまった。ただ、骨格をなすのは裏方であるテストジャンパーの目線。この映画はどんな競技にも、いやスポーツだけでなく生活や仕事のここかしこで表舞台を支える知られざる人たちへのエールだろう。金メダル至上主義や美談風の作劇、時代錯誤的なタイトルなど、実話の持つ力強さと相いれないごった煮の映画にもなっている。飯塚健監督。1時間54分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(鈴)

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