RED/レッド

RED/レッド

2022.5.27

ありがとう、さようなら ブルース・ウィリス:イケオジ好きがオススメ アンサンブルの中で光る「RED/レッド」

失語症を理由に引退を表明した、ブルース・ウィリス。1980年代からアクション、スリラー、コメディーやシリアスドラマまで、ジャンルをまたにかけた作品で、映画ファンを楽しませてくれた。大物感とちゃめっ気を併せ持ったスターに感謝を込めて、その足跡と功績を振り返る。

後藤恵子

後藤恵子

先日、惜しまれつつ失語症による引退を発表したブルース・ウィリス。そのブルース・ウィリスが出演するアクション映画の代表作といえば、「ダイ・ハード」シリーズを思い浮かべる方が多いと思うが、特に女性にはキャリア円熟期の快作「RED/レッド」(2010年)を推したい。

キャリア円熟期 若手を蹴散らす快作 

理由は主に二つ。
 
一つは、RED、正式には「RETIRED EXTREMELY DANGEROUS」、つまり「引退した超危険人物」と呼ばれるかつての精鋭たちが、若手のエージェントを蹴散らす痛快さ。
 
身体能力や視力、聴力、反射神経といったエージェントに必要不可欠な肉体的な能力は、年を重ねると衰えていくものだが、彼らは体が動かなくなった分を、経験で補う。
 
対峙(たいじ)する若手エージェント(カール・アーバン)が、身体能力の高さを誇示するように全速力で疾走するなど、動きのあるシーンが多いのに対して、ブルースをはじめとするREDの面々は、敏捷(びんしょう)ではなくても少ない動きで成果をあげる。効率的でプロフェッショナルなのだ。
 
そしてもう一つは、ブルース・ウィリスというイケオジが恋する可愛い男を演じていること。現役感があってかっこよく、たまに見せる包み込むような優しいまなざしに引き込まれてしまうのだ。
 

実年齢に近い、引退した元CIAエージェント

元CIA(米中央情報局)エージェントで今は静かな独身年金生活を送るフランク(ブルース・ウィリス)は、ある晩自宅で謎の部隊に命を狙われる。ある暗殺リストに自分の名前があることを知り、全米に散ったかつての仲間たちを招集し、現役のエージェントと対峙することになる、というストーリー。
 
映画のはじめの方で、田舎でのんびりと暮らすフランクが、年金事務所の電話担当のサラ(メアリー・ルイーズ・パーカー)に思いを寄せ、話をしたいがために「小切手が届いてない」と苦情を言って、自らきっかけを作る。
 
おそらく仕事柄、恋愛からは遠ざかっていたであろうフランクのサラを見るまなざしといい、CIAに捕まったサラの安全を保証させるための交渉や行動といい(こちらは他の目的もあり一石二鳥を狙っているのですが)、一生懸命になる男の姿はカッコイイのである。
 

受けの演技にもスターの貫禄

10代の頃から同年代よりも年長の俳優に魅力を感じることが多かった自分にとっては、この映画のブルース・ウィリスは、今見てもとても魅力的。それまでの人生経験が表情に表れ、年齢を重ねて円熟味を増しつつも老け込んでおらず、ユーモアと知的な色気も感じさせる。
 
ストーリーに詰めの甘さもあると思うが、バックグラウンドが違う個性豊かな俳優たち(モーガン・フリーマン、ジョン・マルコビッチ、ヘレン・ミレン、ブライアン・コックスら)との演技合戦は、アクションと同じくらい見応えがあるし、彼らをまとめプロ集団のコアとして存在するブルース・ウィリスは、スターの貫禄を感じさせる。
 
アクション以外での彼の魅力は、バランサー的な主役が演じられる点と、受けの演技にあると思う。だからこそ、オムニバス映画「フォー・ルームス」などにもお声がかかるのだろう。「RED」では、同年代でクセのある役者たちとの演技のダンスを楽しい気分で見ることができる。
 
ブルース個人のアクションは「ダイ・ハード」で、アンサンブルの中で魅力が光るブルースに興味を持った方は、ぜひ「RED」を見てほしい。1粒で2度おいしい、を地で行くブルースの魅力を堪能できるとともに、明るい気分でエンドクレジットを迎えられるだろう。
 
「RED/レッド」
ブルーレイ発売中、デジタル配信中
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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ライター
後藤恵子

後藤恵子

ごとう・けいこ 熊本県出身。映画WEBメディア運営会社、広告会社で営業、映画事業などコンテンツビジネス周りを担当。2021年10月にダフネ・エンタテインメント㈱を設立。主に映画・アニメ周りのプロモーション等に携わる。