アニメの新人監督、瞳(吉岡里帆)は念願のデビューを果たすが気合が空回りし、制作現場は重い空気に包まれる。瞳を起用したプロデューサーの行城(柄本佑)はビジネス最優先だ。そんな時、天才監督と呼ばれる王子(中村倫也)が復帰。彼の復活にかけるプロデューサーの香屋子(尾野真千子)は王子のわがままに振り回される。
アニメ業界を舞台にした「お仕事ドラマ」といった様相。どうアニメが制作されて、どんな苦労があるかがよく分かる。瞳がアニメ作りに向ける純粋な思いは、新人らしい熱っぽさにあふれている。行城の意向で宣伝活動に駆り出され、本来の仕事に専念できないもどかしさは、働く人なら誰もが共感するはずだ。
日本で作られるテレビアニメは年300本以上という。締め切りに追われながらの視聴率競争は過酷だろうが、実際にアニメ界で「覇権」を争う人たちにエールを送りたくなった。瞳らが作るアニメのクオリティーにも注目だ。吉野耕平監督。2時間8分。東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7ほか。(倉)
ここに注目
モノ作りやお仕事を題材にした作品の鍵は、少しの共感と情熱、明日への力になるかどうか。間口が広く奥も深いアニメは、うってつけの世界だ。中村と吉岡の緩急、プロデューサーの尾野と柄本の対比もあざやかでひたすら分かりやすい。熱血もの好きには特にオススメ。(鈴)