誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。
2024.4.05
永遠の愛なんておとぎ話だよ! 「ラブリセット 30日後、離婚します」、大切なあの人との出会いを思い出してほしい
いろいろな夫婦の形がある
大大だーい好きだった人が放った一言が忘れられない。
「永遠の愛なんておとぎ話だよ」
なんてひどいことを言うんだと思ったけど、それから数年たった今、ずっとラブラブでいられるカップルは世の中に何%いるんだろうか?と思うくらいにはいろいろな夫婦の形があることを知った。永遠の愛を誓ったもの夫婦仲が冷めきってしまったよくある男女の話。この夫婦に再び永遠の愛は訪れるのか。「ラブリセット 30日後、離婚します」
30日後に離婚する
イケメン弁護士だけど鈍臭くて格好がつかないジョンヨルと、お嬢様でバリキャリだけど破天荒なナラ。大恋愛の末に親の反対を押し切って結婚した二人だが、あまりにもかけ離れた価値観の違いによって憎み合う仲に。裁判所の調停で熟慮期間を経た30日後に離婚することが決定したその日、交通事故に遭った二人はそろって記憶喪失になってしまう。記憶を取り戻すために共同生活を再開させるが、記憶のない二人は再び惹(ひ)かれ合いはじめ…。
「結婚したい」
最近、私が見始めた韓国ドラマ「涙の女王」も、大恋愛の果てに結婚したけれど冷めきってしまった夫婦の話であり、私の中でのトピックはもっぱら「恋愛と結婚の違い」になっている。劇中のジョンヨルのせりふで、「結婚したい」と言う部下に対して「結婚なんてするもんじゃない、恋愛だけにしとけ。いや、結婚してしまうから恋愛もやめとけ」なんて言葉がある。ちょうど私も昨日行きつけの居酒屋で「結婚したい」とずっとほざいていた身なので、グサッと刺さったせりふである。
価値観の違い
かつては愛した人なのに、ここまで憎み合うことができるのか?と思うけれども、決して物語の中だけの話ではなく実際に起こり得ることだから、人間の感情ってよく分からないものだ。「価値観の違い」と一概に言っても、家事分担だったり、育ってきた環境の違いから生まれる生活習慣の食い違い、お互いの仕事の事情や、嫁姑(しゅうとめ)問題など、万国共通の夫婦問題に共感が止まらない人も少なくないはず。
「愛したこと」は永遠に変わらない
「永遠に愛する」と誓ったものの、それってすごく難しいことだと思う。嫌いになることもある、そりゃ人間だもの。でも、「愛したこと」は永遠に変わらない事実である。愛していたことを超えてしまうくらい、嫌な思い出が積もっていく日々だけど、結婚すると決めたあの日に立ち返ってみることの大切さをこの映画が教えてくれるかもしれない。
日常のイライラが消えていく
それにしても美しい主演二人の体を張った演技が素晴らしすぎる。私はジョンヨルを演じたカン・ハヌルが大好きで、それこそ「結婚したい」と思う俳優なのだが、そんな私でもちょっと引いてしまうくらい鈍臭いキャラクターを好演していた。「寝床に入ってからも、もう一度、思い出し笑いをする映画になる」とナム・デジュン監督が語るとおり、ベッドに入ってからまた思い出してクスッとしてしまうようなコメディー映画。夫婦のけんかってはたから見たらこんな滑稽(こっけい)なんだなと思ったら、ちょっと日常のイライラが消えていくような気がする。
笑いあり、ときめきありのこの映画。見た後はクスッと思い出し笑いしながら、家族や恋人にもう少し優しくしてみようかななんて思える。ちなみに「永遠の愛なんて存在しない」と言っていたあの人は、今では結婚して「一生この人を愛します」なんてSNSに投稿していた。きっと数年たって生活に嫌気がさしてしまう日もあるだろう。そんな時はこの映画を見て、大切なあの人との出会いを思い出してほしいなと陰ながら思う。誰かを絶対一生愛する必要なんてないのかもしれないけど、それでも誰かを愛していたいと思わせてくれる「ラブリセット 30日後、離婚します」。ぜひ劇場でご覧ください。