「ヤクザと家族 The Family」

「ヤクザと家族 The Family」©︎2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

2021.1.28

「ヤクザと家族 The Family」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「ヤクザ」として生きる道を選んだ男の20年間を、三つの時代を軸に描く。1999年、暴力団組長、柴咲(舘ひろし)と父子のちぎりを結んだ19歳の山本(綾野剛)。6年後、愛する女性・由香(尾野真千子)と出会うが、対立する組との争いを巡って若頭をかばい獄中へ。さらに14年たち、出所した彼は暴力団対策法などによって弱体化した組の現状を知る。

「オヤジ」「アニキ」と呼び合うヤクザ社会は疑似家族。親に恵まれなかった山本が必要とされる喜びを知り、仲間を大切な存在として認識する過程には共感を覚える。だが、その一員であり続けることが愛する者を傷つけるという不条理。銀行口座すら持てず、出所した山本に「ヤクザをやめても人間扱いされるまでに5年かかる」と嘆くかつての仲間の姿は、暴力団員の置かれた現実と彼らの存在を「必要悪」と黙認してきた一般社会が抱える矛盾を描き出している。監督は「新聞記者」が高い評価を得た気鋭、藤井道人。2時間16分。東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(倉)

異論あり

何をするにも制限され、それでもその世界から離れられず、細々と生計を立てる近年のヤクザたちのショボい姿には妙にリアリティーがあるだけに、由香と娘のストーリーがありきたりで少々雑に見えてしまった。それとも周囲の人たちの現実も実際こんなものなのだろうか。(久)

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