毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.2.03
「レジェンド&バタフライ」
政略結婚した織田信長(木村拓哉)と、ひそかに信長の暗殺を企てる濃姫(綾瀬はるか)はそりが合わず水と油の関係だ。しかし、信長は父を亡くした濃姫に生きる意味を教え、濃姫は自暴自棄になった信長を鼓舞して桶狭間の戦いを勝利に導く。その後も信長は数々の戦を勝ち抜き、2人は天下統一という共通の夢を抱くようになる。
東映の創立70周年記念として製作され、事前の話題作りも十分な注目作。俳優はもちろん、大友啓史監督や脚本の古沢良太らスタッフにも人気者がそろった。夫婦のラブストーリーがメインで、合戦シーンが控えめなのは「新しい時代劇」を意識した結果だろうか。カリスマ性ある信長は木村自身のキャラクターになじんでいるし、気が強く武芸に秀でた異色の濃姫を綾瀬が魅力的に演じていた。
本能寺の変で信長が死を覚悟して以降の描写が、あまりにもファンタスティック。かなりの衝撃だが、エンターテインメントに振り切ったと受け止めたい。2時間48分。東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7ほかで公開中。(倉)
異論あり
信長と濃姫でラブコメとは、虚を突かれた感じ。「るろうに剣心」で日本のアクションを更新した大友監督が、最も有名な戦国武将の類型を破壊してみせた。史実の輪郭をなぞりつつ現代風の造形を持ち込み、最後は夫婦愛をうたい上げる。好き嫌いで言えば、けっこう好き。(勝)