ツユクサ  ©2022「ツユクサ」製作委員会

ツユクサ ©2022「ツユクサ」製作委員会

2022.5.06

ツユクサ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

50歳目前の芙美(小林聡美)は小さな港町で1人暮らし。同僚で友人の直子(平岩紙)や妙子(江口のりこ)の他、直子の息子航平(斎藤汰鷹)とは大の仲良しだ。ある日、芙美が運転する車に隕石(いんせき)のかけらが衝突。そして、草笛を上手に吹く篠田(松重豊)と出会い、親しくなっていく。

きちんと整えられた部屋や手の込んだ料理など、丁寧な暮らしに心を砕く芙美からは、平凡な日常こそ豊かなんだと感じる。直子らとのたわいもない女同士のおしゃべりや、航平との年齢を超えた友情には心が温かくなる。篠田との恋の行方は決してドロドロせず爽やか。おとぎ話のようにも思えるが、作品全体にほっこりとした空気が漂い、こんな大人の恋があってもいいなと納得してしまう。
 芙美の過去は決して幸福だったわけではない。それでも奇跡のような出来事を積み重ね、前を向いて生きている。私たちもきっとそう生きられるはず。希望を持たせてくれる良作だ。平山秀幸監督。1時間35分。東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪・テアトル梅田ほか。(倉)

ここに注目

隕石が車を直撃したのには驚いたが、その後は大事件も起こらず愁嘆場もない。出てくるのは中年の男女ばかり(と子ども)、およそ今様とはほど遠い渋さだが、分別ある大人たちの落ち着いた物語が心地よい。コロナ禍の製作支援あっての企画だろう。端正な映画になった。(勝)