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2024.9.16
「SHOGUN」真田広之 日本人初エミー賞主演男優賞 18冠への長い道のり
15日(日本時間16日)に行われた第76回エミー賞の発表・授賞式で、米配信ドラマ「SHOGUN 将軍」が、連続ドラマ部門作品賞など計18賞を制した。主演男優賞の真田広之、同女優賞のアンナ・サワイは、日本人俳優として初のエミー賞。セリフのほとんどが日本語の時代劇の最多受賞は異例だが、ハリウッドの多様化、包摂性を象徴する結果だった。男優賞の受賞スピーチで真田は「東洋と西洋が力を合わせれば、より良い未来を作れるという証し」と訴えた。その陰には自身の長年にわたる尽力があった。
「SHOGUN」は、今月初めに発表された技術系などの部門で、スタッフらが14賞を獲得。テレビ番組の単一シーズン作品としては、歴代最多の受賞となった。
「SHOGUN 将軍」©2024 Disney and its related entities
20代から海外視野に
真田は1960年生まれ。子役として芸能界入りし、アクション映画を中心にアイドル的人気を獲得。役柄の幅を広げ、演技派としての評価も確立した。20代から海外進出を視野に入れ、99~2000年には英ロイヤル・シェークスピア・カンパニーの舞台「リア王」に出演。年の映画「ラストサムライ」では渡辺謙さんと共に、トム・クルーズさんと共演し世界的な知名度を得た。
以降はロサンゼルスに拠点を移し、ジャッキー・チェンさんと共演した「ラッシュアワー3」(07年)、「ウルヴァリン:SAMURAI」(13年)、「アベンジャーズ/エンドゲーム」(19年)などのアクション映画で日本人の武士や忍者を演じる一方、「上海の伯爵夫人」(05年)では神秘的な日本人を好演した。
撮影現場ではアクションと演技の両面で海外の映画人から尊敬を集め、誤った日本のイメージをただそうと努力。「ラストサムライ」で武士の所作を指導するなど、高い信頼を培ってきた。
米のベストセラー 2度目の映像化
「SHOGUN」は米国の作家ジェームズ・クラベルが75年に発表したベストセラー小説が原作。徳川家康が重用した英国人航海士ウィリアム・アダムス(三浦按針)の史実を下敷きに、時代の変わり目の日本に漂着した英国人航海士ジョン・ブラックソーンと彼を保護した武将、通訳を軸とした人間模様と戦国時代の権力闘争を描く。真田さんは戦国武将、吉井虎永役で主演する一方、プロデューサーとして企画段階から参画。歴史をできるだけ忠実に再現することを目指した。
同じ小説は80年にも、三船敏郎や島田陽子ら日本人俳優が出演して映像化され、日米でヒットした。この時も三船ら日本側の提言も取り入れられ、本格時代劇として評価されたものの、欧米的な偏向は残っていた。しかし今回は、日本側からの視点がより強調されて反映され、戦国時代の武士の倫理観や日本との貿易を巡る英国とポルトガルの摩擦などが丹念に描きこまれている。
「ヒロがドアを開けてくれた」
通訳の戸田鞠子を演じ、主演女優賞を受賞したアンナ・サワイは、ニュージーランド生まれの東京育ちで、日米で活躍する。ミュージカル「アニー」(04年)で主演し、米映画「ニンジャ・アサシン」(09年)でスクリーンデビューした。映画「ワイルド・スピード ジェットブレイク」などにも出演した。受賞スピーチでは「ヒロ(真田さん)が私のような存在にドアを開けてくれた」と感謝した。
真田は作品賞のスピーチで、それまでの英語から日本語に切り替え「時代劇を継承し、支えてきた人たちに感謝したい。情熱と夢は海を渡り、国境を越えました」と述べていた。少数派の日本人や日系人の役が限られる中、自ら道を開こうとした奮闘が結実した瞬間だった。
エミー賞は、米テレビ芸術科学アカデミーが主催。配信を含むテレビ分野の、ドラマやバラエティー番組などでの優れた業績をたたえる。受賞者には背中に翼の生えた女神を表した金色の「エミー像」が贈られる。「エミー」の由来は、かつてテレビカメラの部品として使われた撮像管の一種の愛称「イミー」という。