潜水艦クルスクの生存者たち © 2018 EUROPACORP

潜水艦クルスクの生存者たち © 2018 EUROPACORP

2022.4.08

潜水艦クルスクの生存者たち

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2000年8月、ロシアの原子力潜水艦クルスクは合同演習中の艦内で魚雷が爆発して大破、海底に沈み動けなくなる。司令官ミハイル(マティアス・スーナールツ)ら23人はわずかな酸素で救助を待つが、政府は潜水艦の軍事機密を守ることを優先。家族にも正確な情報を伝えず、英海軍のデイビッド准将(コリン・ファース)ら諸外国からの支援も拒絶する。

極限状況に陥った艦内と対応に奔走する人たち、船員家族の不安をバランス良く配置した実話に基づくエンターテインメント。「潜水艦映画にハズレなし」と言われる通り、艦内での緊迫感が怒濤(どとう)のように押し寄せるが、ラストまで爽快感や安堵(あんど)感は期待できず。乗組員仲間の強固な結束や夫婦・親子愛は描かれるが、同時期公開の「親愛なる同志たちへ」と同様に、国の権威や体制堅持を最重視するロシア政府の決断にひたすらあきれかえる。「アナザーラウンド」のトマス・ヴィンターベア監督。1時間57分。東京・キノシネマ立川高島屋S.C.館、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

ここに注目

アクの強いアート系という印象の強いヴィンターベア監督。極限のサバイバル劇と乗組員の無事を祈る家族のドラマを融合させ、手堅く職人仕事をこなした。国家の威信を優先させ、平然とウソをつくロシアの海軍大将を、名優マックス・フォン・シドーが演じる配役にもびっくり。(諭)