「マイ・ブロークン・マリコ」©2022「マイ・ブロークン・マリコ」製作委員会

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2022.8.22

「マイ・ブロークン・マリコ」亡き人にいつでも会える:英月の極楽シネマ

「仏教の次に映画が大好き」という、京都・大行寺(だいぎょうじ)住職の英月(えいげつ)さんが、僧侶の視点から新作映画を紹介。悩みを抱えた人間たちへの、お釈迦(しゃか)様のメッセージを読み解きます。

英月

英月

身近な友人や大切な家族の死を経験したことがないという方は、少ないのではないでしょうか。私自身、身内や、米国で暮らしていた時にお世話になったアルバイト先の店主など、あの方、この方と思い出されます。と同時に、ある種の後悔の念が押し寄せることがあります。あの時ああすればよかった、きっとそれを望んでいたに違いない、と。今からでも私にできることはないのかと思うことがありますが、映画の主人公・シイノトモヨ(永野芽郁)も同じでした。

幼なじみで親友のイカガワマリコ(奈緒)が亡くなったことを、テレビのニュースで知った彼女は、あろうことかマリコの遺骨を父親(尾美としのり)から奪うという暴挙に出ます。そして、その骨と一緒に、生前マリコが行きたいと言っていた「まりがおか岬」を目指して旅に出ます。

大切な人が亡くなってもなお、何かをしたいという思い。シイノでいえば、父親からの虐待に遭っていたマリコを助けられなかったという後悔がそうさせたのですが、自分が亡き人のためにやっていると思っても、実はそれが縁となり、まるで亡き人からのギフトのように、自分自身が気付きを得ることがあります。

唯一無二の〝ダチ〟を失い「あんたがいない世界で、どうやって生きようか」と絶望したシイノでしたが、旅を通して彼女なりの答えを得ます。映画のように大きな骨箱を抱えてアチコチ行くことは現実的ではありませんが、亡き人を思い、共に生きることは私たちにもできることです。今月はお盆でしたが、実はお盆限定ではないのです。念じるところに、いつでも亡き人と会うことができるのです。9月30日からTOHOシネマズ梅田ほかで公開。

ライター
英月

英月

えいげつ 1971年、京都市下京区の真宗佛光寺派・大行寺に生まれる。29歳で単身渡米し、ラジオパーソナリティーなどとして活動する一方、僧侶として現地で「写経の会」を開く。寺を継ぐはずだった弟が家出をしたため2010年に帰国、15年に大行寺住職に就任。著書に「二河白道ものがたり いのちに目覚める」ほか。インスタグラムツイッターでも発信中。Radio極楽シネマも、好評配信中。

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