「MISS OSAKA/ミス・オオサカ」

「MISS OSAKA/ミス・オオサカ」

2022.10.21

「MISS OSAKA/ミス・オオサカ」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

デンマーク人のイネス(ビクトリア・カルメン・ソンネ)は恋人のノルウェー出張に同行し、大阪から来たマリアと知り合う。2人は親しくなっていくが、マリアは森の中の川べりで突然いなくなってしまう。イネスは大阪に行き、マリアが仕事をしていたナイトクラブで働き始める。

他の誰かになりたいというイネスのアイデンティティーの喪失と発見、その移りようを活写した。ノルウェーの雄大な風景と自然の中の人間、けんそうと人いきれが渦巻く大阪との対比が鮮やかで、競輪場や高架下、路地などにカメラを向け、人を引きつける雑多な街の魅力を切り取った。イネスの内面と映像がじわじわとシンクロしていく描写がすばらしく、一見唐突に見える終盤の展開も受け入れられた。

日本が舞台の外国人監督の作品が象徴的な渋谷駅前交差点などから変容し、その分多様な理解も進んでいるように感じた。森山未來、南果歩、阿部純子が共演。ダニエル・デンシック監督。1時間30分。東京・アップリンク吉祥寺、大阪は11月12日から第七芸術劇場で公開。(鈴)

ここに注目

ドラマとしてはいささか舌足らずだが、序盤のノルウェーの荒々しい原野など、主人公のうつろな心象を投影したようなロケーションが印象深い。「別の誰かになりたい」こと以外、イネスの真意は不明であり続けるが、人間が不確かで孤独な存在であることは切実に伝わってくる。(諭)

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