ユンヒへ©2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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2022.1.07

ユンヒへ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

韓国のシングルマザー、ユンヒ(キム・ヒエ)は高校生の娘セボム(キム・ソヘ)と2人暮らし。ユンヒ宛ての手紙を盗み見たセボムは、送り主の日本人女性、ジュン(中村優子)と母を会わせるため、ジュンの住む小樽へ母を連れ出す。それはユンヒが過去を見つめ直す旅だった。

監督・脚本を手がけたイム・デヒョンの長編2作目。1通の手紙をきっかけに雪深い小樽へ舞台を移すラブストーリーは、岩井俊二監督「Love Letter」の影響を受けたといい、恋人同士だった2人の女性の心のひだを見事に描き出している。

兄だけが大学へ行き、自分は進学を許されなかったユンヒは、ジュンとの恋も家族によって引き裂かれた。能力とは関係なく多くを諦めさせられた彼女は、幸せになることを避けて生きているようにも見える。それはジュンも同じ。しかし、彼女たちは過去と向き合ったことで前を向く。その姿は、生きづらさを抱えるすべての女性へのエールに思えた。1時間45分。東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋ほか。(倉)

ここに注目

ユンヒとジュンの再会(?)、2人とセボムや叔母との思いがあふれるシーンもあえてセリフを絞ることで、見る側の情感を呼びおこす演出が絶品。降り積もる雪の中で純度と輝きを増す一つの愛の形を、鮮明に描ききった。キム・ヒエ、中村優子のたたずまいも称賛したい。(鈴)

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