第76回カンヌ国際映画祭で「怪物」の記者会見に臨む(右から)安藤サクラ、黒川想矢、是枝裕和監督、坂元裕二、柊木陽太、永山瑛太=2023年5月18日、勝田友巳撮影

第76回カンヌ国際映画祭で「怪物」の記者会見に臨む(右から)安藤サクラ、黒川想矢、是枝裕和監督、坂元裕二、柊木陽太、永山瑛太=2023年5月18日、勝田友巳撮影

2023.5.19

是枝監督「坂元さんとは注目する題材が似ていて同じ時代の空気を吸っていると感じていた」第76回カンヌ国際映画祭「怪物」記者会見

第76回カンヌ国際映画祭が、5月16日から27日まで開催されます。パルムドールを競うコンペティション部門には、日本から是枝裕和監督の「怪物」、ドイツのビム・ベンダース監督が日本で撮影し役所広司が主演した「パーフェクトデイズ」が出品され、賞の行方がきになるところ。北野武監督の「首」も「カンヌ・プレミア」部門で上映されるなど、日本関連の作品が注目を集めそう。ひとシネマでは、映画界最大のお祭りを、編集長の勝田友巳が現地からリポートします。

勝田友巳

勝田友巳

南仏・カンヌで開かれている第76回カンヌ国際映画祭で18日、コンペティション部門に出品された日本映画「怪物」の記者会見が開かれた。是枝裕和監督、脚本の坂元裕二、出演した安藤サクラ、永山瑛太、子役の黒川想矢、柊木陽太が参加した。
 
是枝監督は「万引き家族」でパルムドールを受賞するなどカンヌ常連だけに、会見場には各国のメディアが集まった。映画は小学校で起きた体罰事件を三つの異なった視点から描く。
 

永山瑛太「誰が怪物なのか、見た人の数だけ正解があると思う」

 是枝監督は、2018年12月に、坂元とプロデューサーが作ったプロットを読んで監督を引き受けたと説明し「観客を巻き込みながら、存在しない怪物を見せてしまうプロセスが挑戦的。坂元さんとは注目する題材が似ていて、同じ時代の空気を吸っていると感じていた。自分には描けないことを丁寧に描いていた」と魅力を語った。
 
着想のきっかけを聞かれた坂元は「信号が変わったのに発進しないトラックに催促のクラクションを鳴らしたところ、車いすの人が横断中だった。そのことをずっと後悔していて、見えないものがあることを、どうやったら理解できるか常々考えていた」と答えた。
 
是枝監督については「30年ほど前にカンヌに遊びに来て、いつかここで作品を発表できたら幸せだと思った。その間是枝監督はカンヌで評価され、憧れと焼きもちを抱いて見上げていた。是枝監督には強い社会的責任と思いやりがある。私には少し足りないと思い、今回足した」と話した。
 
中国の記者は、安藤が「万引き家族」に続く是枝作品への出演だと指摘して感想を求めた。安藤は「もう一度出演するにはまだ早いのではと不安だったが、スタッフ、キャストが志を持っていて、ストレスなくいられる素晴らしい撮影だった」と振り返った。永山は映画について「どんな映画かと聞かれるけれど、自分でも分からない。誰が怪物なのか、見た人の数だけ正解があると思う」と語った。
 

事件と共に自分の中に芽生えた気持ちに戸惑う少年の葛藤も描く

 物語には、自分の中に芽生えた気持ちに戸惑う少年の葛藤が描かれる。英国メディアの「日本ではLGBTQなど性的少数者を扱った映画は少ないのでは」との質問に、是枝監督は「LGBTQに特化した作品ではなく、少年の内的葛藤の話と捉えた。誰の心の中にでも芽生えるのではないか」と応じた。黒川が「役を演じてみて、リンゴが好きになるように、男の子を好きになれるのではないかと思った」と答えると、会場から温かい拍手が起きた。
 
安藤の勤め先はクリーニング店。是枝作品では「万引き家族」「ベイビー・ブローカー」に続けて3作連続で同じ職業の設定だ。坂元は「前世がクリーニング屋さんだったのかも」と笑わせ「テクニックのいる仕事で、美しい。憧れている」と打ち明けた。是枝監督は「職業に〝匂い〟や〝色〟が消えていく中で、この仕事には蒸気の音や熱がある。今回の作品は火事で始まり湖や台風も登場して、坂元さんが意識して書かれたのだと思いながら演出した」と明かした。
 
「怪物」は6月2日(金)から全国公開

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ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

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