チャートの裏側:多岐にわたる反応の行方は
「怪物」脚本家の坂元裕二氏が、カンヌ国際映画祭で脚本賞受賞の際、あるメッセージを発した。「たった1人の孤独な人のために書いた」。見逃せない発言だ。本作は、ある局面を違う視点で描く。その過程で、生きづらさをにじませる少年2人の交流が画面いっぱいに広がる。 発言の真意が2人の少年にあったのだと思う。「1人の孤独な人のために」向けた脚本家の思いは、この劇構成が必要だった。物語の深奥に、少年同士のひそやかなつながりがある。それがラスト近くに至り、前面に出てくる。カンヌは、この劇構成を高く評価したのだろう。 本来なら、作品は坂元氏の言葉通りに、ある特定の人に向けられていたと思う。それが受賞によって、...