日本版CNC設立を求める会の記者会見に臨んだ、(左から)諏訪敦彦、是枝裕和、舩橋淳各監督=2022年6月14日

日本版CNC設立を求める会の記者会見に臨んだ、(左から)諏訪敦彦、是枝裕和、舩橋淳各監督=2022年6月14日

2022.6.13

「日本版CNCの設立を」 是枝監督ら「求める会」会見で訴え

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ひとしねま

ひとシネマ編集部

映画業界の恒常的な支援組織を作ろうと、映画監督有志らによる「日本版CNC設立を求める会」(action4cinema)が発足し、東京都内で14日、是枝裕和監督らが記者会見した。
CNCは「国立映画映像センター」の略称で、フランスの映画業界を幅広く、手厚く支援する組織。日本でも同様の支援組織を作ろうと、2年ほど前から、是枝監督ら有志が日本映画製作者連盟(映連)と協議してきた。今後、より強く業界内外に働きかけようと、「求める会」を設立した。
 

映画界が一枚岩となった共助の仕組みが必要だ

会見には是枝監督のほか、諏訪敦彦、西川美和、深田晃司、内山拓也、岨手由貴子、舩橋淳各監督らが出席。是枝監督が「2年ぐらい前から監督同士で、問題意識を、状況を変える具体的な動きにしようと話し合ってきた。映画業界が一枚岩となり、共助のシステムが必要だ。今後発展していくために、あるいは衰退しないために、何が欠けているか勉強しながら発信していく」と設立経緯を説明。
 
諏訪監督は「新型コロナ禍でミニシアターを救ったのは、クラウドファンディングなどだった。次は誰が救うのか。持続的に互いに支え合うシステムが必要だと感じた。海外と映画を作って感じるのは、日本の支援はバラバラで統括機関がないこと。共助システムをつくらなければいけない」と訴えた。
 
内山監督は「製作本数が増加する一方で低予算化が進み、全体的な製作環境は悪化して、若手がどんどん現場から消えている。予算と釣り合わない要求は、スタッフ、キャストに無理を強いることになる。犠牲の上で成り立つのではなく、持続的に映画を作れる業界にしないと未来はない」と現状を指摘した。
 

教育、労働環境、製作、流通――4本柱

「求める会」は日本版CNCの柱として、人材育成、映画教育を推進する「教育支援」▽ハラスメント対策、労働環境の適正化を図る「労働環境保全」▽企画開発を含む「製作支援」▽映画館や配給者を援助する「流通支援」――の四つを掲げる。財源は海外の組織にならい、映画の興行収入や配信、放送収入の一定割合を還元する制度を構想。「産業としての持続可能性」と「芸術文化としての多様性」を両輪として支援する。
 
今後は引き続き映連や職能団体との協議を続け、組織設立に向けて働きかけるという。
 
会見では役所広司がビデオメッセージを寄せ「優れた企画が経済的事情で実現しないのは寂しい。若者たちに才能を発揮できる環境を用意することが、映画の力になると信じている」とエールを送った。
 

興収からの徴収で手厚い財源 CNC、KOFIC

会見では支援制度の例として、CNCと韓国のKOFIC(韓国映画振興委員会)の仕組みを挙げた。CNCは1946年に映画産業復興のために発足。興収や放送事業者から収益の一定割合を徴収、2019年の総予算は913億円で、これを映画の企画から製作、海外セールス、ゲームなどにも手厚く支援している。
 
KOFICの設立は1999年。興収からの徴収と公的資金を財源とする。2020年計画では約95億円を、映画の製作、流通、先端技術や多様性確保まできめ細かく支援し分配している。
 
「求める会」のホームページは、https://www.action4cinema.org/

ライター
ひとしねま

ひとシネマ編集部

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