「メグレと若い女の死」 ©2021 CINÉ-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.

「メグレと若い女の死」 ©2021 CINÉ-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.

2023.3.17

「メグレと若い女の死」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ジョルジュ・シムノンの「メグレ警視」シリーズ、久々の映画化である。かつてシムノン原作の「仕立て屋の恋」を手がけたパトリス・ルコントが監督を務めた。1953年、パリ・モンマルトルのバンティミーユ広場で若い女性の刺殺体が発見される。捜査を担当するメグレ(ジェラール・ドパルデュー)は、わずかな手がかりをたどり、被害者の身元さえわからない事件の真相に迫っていく。

愚直に現場主義を貫くメグレの視点で進行する映像世界には、今どきのクライムスリラーのような激しい見せ場は一切ない。娘を亡くしたつらい過去を持つメグレが、地方出身者である被害者の境遇に寄り添い、事件にのめり込んでいく姿を描出。パリの裏町が寂れたムードを漂わせ、被害者が着用していた血まみれの高級ドレスのイメージが鮮烈な印象を残す。メグレの人間臭い魅力を浮かび上がらせる演出、演技も実に細やかで、滋味に富むクラシカルなミステリー劇となった。1時間29分。東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田(24日から)ほか。(諭)

ここに注目

謎解きの面白さもさることながら、長くはない尺の中でじっくりいぶしていくかのように真相に近づき、若い女の人生に寄り添うメグレの姿に酔わされる。久しぶりに「仕立て屋の恋」を見たくなった。薄曇りのパリの街並みとクラシカルな装いで存在感を示すドパルデューも好相性。(細)

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