「私は確信する」

「私は確信する」©Delante Productions - Photo Séverine BRIGEOT

2021.2.11

時代の目:私は確信する 法の正義、勝利への猛進

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

裁判映画はハズレが少ない。状況が二転三転する法廷は劇的だし、判決で白黒決するカタルシスもある。事実を基にしたこのフランス製裁判映画、裁判の公正さも怪しくなった時代の反映か、主役は弁護士でも被告でもない。王道からは少し離れているが、やはりハズレではない。

主人公は、妻殺害の罪に問われた大学教授ヴィギエの無罪を信じる、料理人のノラ(マリーナ・フォイス)。1審は無罪だったが検察側が控訴し、第2審が始まる。ノラは頼まれもしないのに敏腕弁護士のデュポン・モレッティ(オリビエ・グルメ)の元に押しかけて弁護を引き受けさせ、一人で育てる息子も仕事もそっちのけで、250時間にも及ぶ通話記録を分析して新証拠を見つけ出す。デュポン・モレッティの正義感にも火を付ける。

事件や裁判の説明は二の次。高速テンポの編集は、かろうじて付いていけるギリギリの情報だけ残し、ノラの猪突(ちょとつ)猛進に焦点を当てる。裁判もノラの人物像も、最後までよく分からない点があるものの、誰が勝利したかは明白なのである。アントワーヌ・ランボー監督。1時間50分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(勝)

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