「3つの鍵」© 2021 Sacher Film Fandango Le Pacte

「3つの鍵」© 2021 Sacher Film Fandango Le Pacte

2022.9.16

3つの鍵

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ローマの高級住宅地で車が建物に衝突。死亡事故を起こした青年の母である裁判官のドーラ(マルゲリータ・ブイ)、1階に妻と娘と共に住むルーチョ(リッカルド・スカマルチョ)、2階で暮らす妊婦のモニカ(アルバ・ロルバケル)ら同じアパートに住む三つの家族の問題が、事故をきっかけに浮かび上がる。

監督はイタリアの名匠、ナンニ・モレッティ。前作の「母よ、」も家族の物語ではあるが自叙伝的な作品で、小説を映画化するのは初めて。監督の多くの作品から感じられるユーモアは鳴りを潜め、隣人や友人に向けられる疑いや思い込み、家族の不和と孤独が交錯し、着地点が予想できないサスペンスのよう。小さな選択が大きな波を生み、10年にわたって描かれる物語は息が詰まるようなエピソードの連続だ。

しかし閉塞(へいそく)感がふっと緩むような祝祭的なラストには、家族とコミュニティーに関するかすかな希望も感じられた。モレッティは裁判官役としても出演。1時間59分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(細)

ここに注目

疑念や不安、誘惑、強迫観念、そして孤独が家族愛と交錯する端正なドラマを堪能した。無駄な描写をそぎ落として心の葛藤や闇に迫る演出は歯切れが良く、人物描写の繊細さでリアル感が増した。終盤のあふれる陽光と空気感が、すべてを包み込むようでホッと息をついた。(鈴)

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