映画「母性」の一場面©2022 映画「母性」製作委員会

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2022.11.25

「母性」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「愛あたう限り、娘を大切に育ててきました」。遺体で見つかった女子高生の母親の言葉が報じられる中、娘を愛せない母ルミ子(戸田恵梨香)と、ルミ子に愛されたい娘清佳(永野芽郁)の回想が始まる。「私は強く、娘を抱きしめました」「母は強く、私の首をしめました」。同じ時を過ごし、同じ出来事を振り返っているはずなのに、母娘の証言は食い違っていく。

原作は湊かなえの同名小説。母と娘のシーンは緊張感が漂い、心がヒリヒリする。娘に対するルミ子の冷淡な態度は真に迫り、戸田にとっては新境地になったはず。ルミ子の実母(大地真央)や義母(高畑淳子)の愛情もどこかゆがんでいて、「母の愛は絶対」などと幻想を抱く人には「母性神話」を打ち砕くホラーと感じるかもしれない。

愛されて育ったのに、なぜルミ子は娘に冷たいのか。その理由を知ると、愛情が親から子へ受け渡されることは当たり前ではなく、奇跡なのだと感じた。廣木隆一監督。1時間56分。東京・丸の内ピカデリー、大阪ステーションシティシネマほか。(倉)

異論あり

母と娘という、最も近くて複雑で恐ろしい女同士の関係を、戸田がここまでおどろおどろしく演じているのに、最後にわかりやすくまとめてしまうようなシーンがあって残念。もっと嫌な終わり方でもいい。この母親に育てられたからこそと思える何かを清佳の中にも見たかった。(久)

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