「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」

「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」©︎2021 20th Century Studios. All rights reserved.

2022.1.27

「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

舞台はフランスの架空の街にある、雑誌「フレンチ・ディスパッチ」の編集部。編集長(ビル・マーレイ)が急死し、彼の遺言によって雑誌の廃刊が決まる。社会問題からアートにグルメまで、さまざまな話題を独自の視点で取り上げてきた人気雑誌に掲載された四つの記事を振り返る、オムニバス形式の物語。

ベニチオ・デル・トロ、ティモシー・シャラメ、レア・セドゥなど、数えきれない豪華キャストだけでも画面がぜいたくなのだが、次々と移り変わる一つ一つのシーンはモノクロやアニメなど手法を切り替え、背景の細部まで整えられ、完璧なまでに美しい。まさに、丁寧に編集された1冊の雑誌だ。四つの物語もそれぞれ個性的でセンスが良さそうなのだが、私は写真やレイアウトに見とれるあまり本文を読むのがおろそかになってしまったらしい。これが本当に雑誌だったら、部屋に飾って何度も手に取り、ゆっくりぺージをめくれるのに。ウェス・アンダーソン監督。1時間48分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(久)

異論あり

 何とぜいたくで、やりたい放題の映画だろう。風変わりな登場人物、手作りのぬくもりあるパステル調のセット、縦横無尽のカメラワーク……。奇想に満ちた映像世界の視覚的な愉悦は、比類なきレベル。だが、ごちそうも過ぎれば胃もたれするように、脳内の処理にてんてこ舞い。(諭)

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