第76回毎日映コンスポニチグランプリ新人賞 和田庵

第76回毎日映コンスポニチグランプリ新人賞 和田庵

2022.2.17

スポニチグランプリ新人賞 和田庵「茜色に焼かれる」お芝居したいとほんとに思う

日本映画大賞に「ドライブ・マイ・カー」

男優主演賞 佐藤健「護られなかった者たちへ」
女優主演賞 尾野真千子「茜色に焼かれる」


第76回毎日映画コンクールの受賞作・受賞者が決まりました。2021年を代表する顔ぶれが並んでいます。受賞者インタビューを順次掲載。
1946年、日本映画復興を期して始まった映画賞。作品、俳優、スタッフ、ドキュメンタリー、アニメーションの各部門で、すぐれた作品と映画人を顕彰しています。

勝田友巳

勝田友巳

留学後の再出発「好スタートが切れた」


石井裕也監督の「茜色に焼かれる」で、尾野真千子演じる良子の息子、純平を演じた。カナダ留学から戻ってすぐに役を射止め、「大変だった」という撮影を夢中で乗り切った。尾野の女優主演賞と、共演の片山友希もスポニチグランプリ新人賞を同時受賞。「好スタートが切れました」と晴れやかによろこびを語った。
 
オーディションに応募し、3次審査まであるはずが一発合格。知らせを受けた母親がまず動転し、「早口すぎて何言ってるか分からなかった」。自身も「台本を読んだら荷が重くて、どうしよう」と驚いたとか。

 


「尾野真千子さんが、びっくりするくらいいい人で」

「テレビっ子だったから、憧れていた」という芸能界に、8歳で足を踏み入れた。中学に入ってから、語学力をつけて人間の幅を広げたいと、芸能活動を休んでカナダに留学。ところがコロナ禍のために予定を短縮し、1年半で帰国して最初に受けたのが「茜色に焼かれる」のオーディションだった。
 
「まさか受かるとは思ってなくて。お芝居も久しぶりでプレッシャーがすごくて、めちゃくちゃ大変でした」。尾野とは初めての共演。「大女優じゃないですか。すごい怖い人だと思っていて、覚悟して現場に行ったらびっくりするくらいいい人で。現場が沈んでいても、尾野さんが来ると、パーッと明るくなるんです」
 
良子は夫を事故で亡くし、営んでいたカフェはコロナ禍で閉店。その後の勤め先もクビになって、風俗店で働きながら純平を育てている。「まあ、頑張りましょ」が口癖で、ひどい仕打ちにもそういって平気なふりをする。純平は成績優秀で純情な少年で、良子に甘える一方、時にやきもきしながら支えるしっかり者でもある。
 


純平とはかけ離れたたアウトドア派

「純平は読書が好きで勉強が得意で、インドアだと思うんですけど、そこは僕とはかけ離れてる。僕は公園で遊ぶのが好きで 勉強はすごく苦手なんですよ」。自身はスケートボードに夢中で、留学先のカナダでもスケボーばかりしていたとか。それでも「ああいうお母さん好きです。『まあ頑張りましょ』と、うちの母もよく言うんですよ」。
 
緊張して臨んだ現場で「最初は全然、台本の意図を読み取れていませんでした。監督から『そこは違うな』と指摘されて、徐々に慣れていった」。「気さくなお兄さんみたい」という石井監督に導かれ、尾野や片山にも助けられて、純平を印象深く演じた。「コロナ禍のすごい不条理な世界で、純平と良子は2人で必死に生きて闘っている。純平は良子が大好きなんだけれど、素直に表に出したりしない。そこはちょっと、複雑でした」
 
芸能活動の再開を、幸先良くスタート。「お芝居したいと、今はほんとに思いますね。カナダに行く前は、監督の指示に従うだけで何も考えてませんでしたけど、何にでもチャレンジしたいです」。出てくる言葉も表情も、初々しさでいっぱいだった。

ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

カメラマン
ひとしねま

小川昌宏

おがわ・まさひろ 毎日新聞写真部カメラマン

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