「遠いところ」 ©2022 「遠いところ」 フィルムパートナーズ

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2023.7.07

特選掘り出し!:「遠いところ」 現実をありのままに

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

沖縄・コザ。17歳のアオイ(花瀬琴音)は祖母に幼い息子を預け、朝までキャバクラで働き生活費を稼ぐ。夫マサヤは仕事を辞め、職を探さずに金を無心。アオイに暴力を振るう。社会に適応できない若い男女の悲惨な話に見えるが、貧困と性差別、自己責任の圧力がリアルに描かれ、見る者に迫る力作だ。

アオイはなぜ離婚しないのか、警察に行かないのかと思うかもしれない。しかしこれが現実。工藤将亮監督は撮影の5年前から沖縄の若者から聞いた多くの実話を基に、セリフやキャラクターを構築。アオイの部屋やコザの路地なども含め映画にウソがない。物語に現実を持ち込んだ。「豚と軍艦」などの今村昌平監督に通じる映画作りも垣間見える。奇をてらわず、見せる側の主観を押し付けることなくありのままに撮った。

共感を求めたり告発したりはせず、声高に訴えることもない。助けを求めるすべさえも知らず、もがき苦しみ疲弊していくアオイとその仲間、何もしようとしない大人たちを見せて終わる。周囲の大人は救えなかったか、と静かに問う。息子と生き抜こうとするアオイの鬱屈感だけが消えない。撮影1カ月前からコザで実際に生活して役を作った花瀬の演技も絶賛したい。2時間8分。東京・テアトル新宿、大阪は14日からシネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

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