「仕掛け人・藤枝梅安」 ⓒ「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

「仕掛け人・藤枝梅安」 ⓒ「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社

2023.4.07

「仕掛人・藤枝梅安2」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

藤枝梅安(豊川悦司)は恩人・津山悦堂(小林薫)の墓参りのため、相棒の彦次郎(片岡愛之助)と京に向かっていた。彦次郎は道中で、妻子を死に追いやった敵に似た男を見かける。梅安が突き止めたその男は松平甲斐守の家臣・峯山又十郎(椎名桔平)だった。一方、殺しを仲介する元締から彦次郎の敵の仕掛けを依頼された梅安は、因縁深い浪人の井上半十郎(佐藤浩市)とすれ違う。

池波正太郎原作の同名時代小説の映画化第2弾。はり医者と冷酷な仕掛人の両面を持つ梅安を豊川が演じ、色気と諦観漂うダークヒーローを創出した。愛憎渦巻く展開と因果、華麗な殺陣、撮影や照明など丁寧なスタッフワークが集結して、見応えたっぷりの時代劇が生まれた。仕掛人梅安が生み出す独特の世界観と時代劇の醍醐味(だいごみ)である活劇のワクワク感を堪能した。佐藤や小林、椎名ら重厚な俳優陣が加わって、男たちの宿命と人間模様も映し出すてんこ盛りの一本。河毛俊作監督。1時間59分。東京・新宿ピカデリー、大阪・あべのアポロシネマほか。(鈴)

ここに注目

緒形拳をはじめ多くのスターが演じてきた梅安。今回の映画版では過去の因縁が明らかになって、梅安が悪だくみに利用されたり恨みを買ったりしていたと描かれる。正邪の境があいまいになった現代を映したのか、陰影が濃い。苦みと渋みが加わって、大人の味わい。(勝)

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