「バティモン5 望まれざる者」 ©SRAB FILMS - LYLY FILMS -  FRANCE 2 CINÉMA - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023

「バティモン5 望まれざる者」 ©SRAB FILMS - LYLY FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINÉMATOGRAPHIQUE – 2023

2024.5.24

「バティモン5 望まれざる者」 あらわになる分断と対立

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

パリ郊外で労働者階級や移民の家族が多く暮らす地区の一画、通称バティモン5。市長となった医者ピエールは、老朽化する団地の取り壊しと治安の改善を進めようとする。一方、バティモン5の住人で移民らのケアスタッフとして働くマリ出身の女性アビーは、行政の怠慢な対応に苦しむ住人を助けようと奔走する。行政と住民の対立が激化する中、市長は強制退去を打ち出した。

「レ・ミゼラブル」のラジ・リ監督は、この地区が抱える問題を冷徹な視線で描く。ドキュメンタリー的手法と、ドラマ性を前面に出すフィクションの演出とを使い分けて、複雑な問題の核心に迫っていく。強硬手段で住民を押さえつけようとする市長、強引なやり方に憎しみを抑えきれないアビーの友人ブラズ、退去せざるを得ない団地の住民たちとそれぞれに、リアリティーを伴った存在感がある。選挙への出馬を決めたアビーには、現実を悲観するばかりではなく、将来への希望も感じさせた。人の愚かさを見据え、時に寄り添う音楽も効果的だ。1時間45分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・テアトル梅田ほか。(鈴)

ここに注目

政治経験の浅い右派市長が、老朽団地の建て替えを強引に進めたことで分断と対立があらわになる。右派と左派、黒人と白人、移民と旧来の住民、貧者と富者といった単純な対立軸ではなく、それぞれの中にも分断がある。この映画ほど先鋭化していなくても、日本にもその〝芽〟はある。人ごとではない。(勝)

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