「青いカフタンの仕立て屋」© Les Films du Nouveau Monde - Ali n’ Productions - Velvet Films – Snowglobe

「青いカフタンの仕立て屋」© Les Films du Nouveau Monde - Ali n’ Productions - Velvet Films – Snowglobe

2023.6.16

「青いカフタンの仕立て屋」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

モロッコの海沿いの町、サレ。ミナ(ルブナ・アザバル)とハリム(サーレフ・バクリ)の夫婦は旧市街の路地裏で仕立屋を営み、特別な日に着る民族衣装のカフタンを作り続けてきた。腕のいい職人である寡黙な夫と、テキパキと接客をするしっかり者の妻。ある日、ユーセフ(アイユーブ・ミシウィ)という若い男を助手として招き入れたことで、そんな夫婦の日常に変化が訪れる。

病のため余命がわずかなことを知っているミナが、葛藤や嫉妬を抱えながらも最後にどんな覚悟を決めるのか。愛する人の生きづらさを解放しようとする彼女のあまりにも深い愛に、胸が締め付けられる。監督は、「モロッコ、彼女たちの朝」で保守的な社会を背景に未婚の妊婦とシングルマザーの交流を描いたマリヤム・トゥザニ。本作では、異性愛しか許されていない社会からはみ出した者の苦悩をすくい取った。前作と同様、セリフに頼りすぎることなく、布地に触れたときの感覚やまなざしの交差によって登場人物たちの思いを雄弁に伝えている。2時間2分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(細)

ここに注目

生地やデザインなど、細部へのこだわりにハリムの職人としてのプライドがにじみ、金糸で作るイチジク形のボタンや優美な刺しゅうなど繊細な手仕事に目を奪われる。伝統の継承の難しさやミナの病、ハリムが抱える秘密といった困難に直面しながらも、夫婦が静かに紡ぐ愛の奥深さに圧倒された。(倉)

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