「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」 ©︎2022 Why Not Productions-Arte France Cinéma

「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」 ©︎2022 Why Not Productions-Arte France Cinéma

2023.9.15

「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

舞台俳優として活躍し、演出家の夫と息子がいるアリス(マリオン・コティヤール)と、人里離れた山中で妻と暮らす詩人で弟のルイ(メルビル・プポー)。2人は長年にわたって互いを憎み合い、長らく顔も合わせていない。しかし、両親が事故に遭い再会することになる。

「そして僕は恋をする」のアルノー・デプレシャン監督による姉弟の愛憎劇。いがみ合う2人の話なのに、不快感を感じない。サスペンスもあり、時にコミカルささえしのばせて映し出す。俳優と詩人。自らの感性を赤裸々に表現し、想像力をかきたてる瞬間を生きている設定もうなずける。両親との関係やルイの子供の死など〝嫌い〟を助長することはあっても、憎み合う要因は明かされない。面倒でやっかいな姉弟だ。

そして、何もなかったかのような終盤のさりげない2人がいい。疲弊からの解放を軽やかに描出。人間への賛歌がきらめいている。1時間50分。東京・Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

ここに注目

憎しみと愛は表裏一体であること、明確な理由などなくても関係がこじれてしまうことが、痛みとともに伝わる。姉弟だからここまでもつれた糸がほどけなくなったのか、もしも恋愛関係だったら、修復の可能性はゼロだったのか。2人の混乱に巻き込まれるような時間が流れるが、最後には希望の光が見える。(細)