毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2024.8.02
「コンセント/同意」 目をそらさず〝同意〟の意味について考えよ
文学好きな13歳の少女、バネッサ(キム・イジュラン)は、50歳の作家、ガブリエル・マツネフ(ジャン・ポール・ルーブ)と出会う。彼は自身が小児性愛者であることを隠さず、センセーショナルな作品を発表して注目を集めている時代の寵児(ちょうじ)。14歳になったバネッサは、同意のうえで彼と性的な関係を持つ。
バネッサ・スプリンゴラが自身の体験をつづり、2020年にフランスで出版した告発の書「同意」を映画化。マツネフは彼女に初めは文学的な手紙を書き、じらし、やがて巧みに捕食する。誰かの特別な存在になりたいと願う未熟な少女を支配するのは、たやすいことだったはずだ。会いに行くことを止める母の声も、熱に浮かされている娘には届かない。精神的にも肉体的にも少女から搾取し、消費していく行為は、卑劣極まりない。この男を野放しにして評価までする社会の異様さ。寄りのカットが多いのは、このグロテスクな関係から目をそらさず、〝同意〟の意味について考えよという、バネッサ・フィロ監督からのメッセージだろう。1時間58分。東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋ほか。全国でも順次公開。(細)
ここに注目
マツネフは小児性愛嗜好(しこう)を公言し作品を発表していたが、母親や文壇の多くが容認していたことに驚いた。バネッサがマツネフに恋し、とりこになっていく過程を緻密に描いていることに作り手の思いが感じられる。原作出版から3年余りでフランスで公開され、意識変革を迫る一助にもなった問題作。(鈴)